東証一部昇格が期待できる銘柄に先回りして投資する――。人気投資ブロガーで個人投資家のv-com2(ブイコムツー)さんが編み出し、大反響を呼んだ昇格投資法。でも、成功する人、失敗する人がいるのはなぜ? 『運、タイミング、テクニックに頼らない! 最強のファンダメンタル株式投資法』を出版したばかりの氏が答えます。

東証一部に昇格しそうな銘柄を
先回りして買い仕込む

 私が出版した第1作目である『昇格期待の優待バリュー株で1億稼ぐ!』(すばる舎)では、主に、東証一部に昇格する銘柄を、その発表前に察知して、先回りして投資するという手法を紹介しました。
 
 東証一部に昇格するには、いくつかの要件を満たさなければなりません。
 そこで、要件を満たすための施策を行っている企業を見つけ出し、詳しく調べて、その企業が東証一部昇格を目指しており、かつ、「優待面、資産面、収益面」のどれかで魅力があるとわかったら、他の人より先に投資して、昇格に伴う株価の上昇を享受する……というのがおおまかなところでした(詳しくは拙著をご覧ください)。

 おかげさまで、本は大変好評をいただき、実際に利益をあげることができたという報告も、たくさんいただいています。

 一方で、筆者の意図とは異なる理解をしている人もいるようです。
 たとえば、「昇格しそうな企業であれば、どんな銘柄でも、いつでも、買いだ」という、安易な考えをしてしまっている人です。
 そういう人たちからは、「昇格投資をしてもうまくいかないじゃないか」という声も聞こえてきました。

 2016年前半の相場環境が、非常に不安定だったことも一因でしょう。
 ただ、うまくいかないという人が行っている昇格投資を見てみると、すごく狭い視点でしか見ていないな、という印象があります。

 昇格するかどうかという1点を研究しただけで、いつでも株式投資で利益をあげられると思うのは甘すぎます。
 東証一部に昇格するかどうかだけでなく、「優待面、資産面、収益面の魅力」を探るという重要な視点や、先回りするという観点を疎かにしてしまっているのです。

 昇格面以外で考慮しなければいけないこととして、たとえば

 ・マザーズ銘柄は割高な場合が多いので、東証二部や地方市場を中心に取引する
 ・どの段階で投資するかはその人次第で、段階的にリスクとリターンの関係は変化し、市場全体の影響も受ける
 ・優待面、資産面、収益面のいずれかで魅力的な銘柄を探す

 などがあります。

 すでに人気化して株価が高くなっているマザーズ銘柄であったり、会社側が昇格申請していることを発表済みだったり……そうした銘柄が東証一部昇格を発表しても、それほど株価は上がりません。
 昇格の正式発表があったら持ち株を売ろうと待ち構えている人が大勢いる状況では、「織り込み済み」ということで、発表後に株価が下がる場合すらあるのです。

 最近でも、アイドママーケティングコミュニケーション(9466)が昇格を発表しましたが、翌日の朝は下落スタートとなっていました。
 なぜなのか? 
 この会社の適時開示をさかのぼってみると、2017年1月に昇格申請をしていることを発表済みですし、その後の立会外分売においても昇格申請をしていることをアピールしています。
 それらを受けて、1月以降、株価は40%近くも上昇していました。昇格を織り込んでの上昇で、正式発表後に売りたい人がたくさん待ち構えていることは明らかです。

 昇格投資が有効になるには、まだあまり目立たない割安な段階で投資をし、人気が高まった所で売るという大前提があり、そこを無視してしまうと、うまくいく可能性は小さくなってしまいます。

 みなさんには、この例をもって、「昇格の発表をしても翌日上がらないから昇格投資なんて無意味」などと単純に考えるのではなく、「それなら、どういう段階で投資をするのが、“織り込み済み”にならずに有利なのか」と考えて、昇格投資の本質をつかんでほしいと思います。

 本質を理解していれば、環境が変わっても、自分で調整できます。
 たとえば、昇格投資の手法が広まってきて、昇格候補の銘柄を買う人が増えてきたというなら、それに対応して、どの時点で投資するのがいいのかなどを微修正します。

 人よりさらにもっと先回りして早い段階で買ってみるとか、割安で業績面も上方修正が期待できるなど、その他の魅力を詳しく探ることを重視するとか、そういった複数の視点から魅力を探して対処ができる人は、今でも昇格投資で十分な利益をあげているのです。