私たちは、さまざまな場面で「取り返しようのない費用」にとらわれてしまう。しかし、一流の経営者や投資家たちは、その費用を忘れるべきものだと知っている。なぜなら、経済学を学んでいるからだ。経済学ではどのようにこの費用について説明されているのか。『会社に入る前に知っておきたい これだけ経済学』の著者・坪井賢一氏に教えてもらった。

誰もがとらわれる「取り返しようがない費用」

 個人の活動においても、企業経営においても、すでに使ってしまって取り返しようがない費用にとらわれてしまうことは多い。この費用のことを経済学ではサンクコストという。日本語で埋没費用という意味で、意思決定時にとても重要な考え方となる。

 たとえば、大学受験の際にもサンクコストは発生している。私大文系の大学受験料は、だいたい3万5000 円が相場だろう。第4志望から第1志望まで4校受験し、全部合格したとする。受験料は4 校合計で14万円も支払っている。第1志望に合格したあとで、残り3校分の受験料10万5000円をもったいないと考える人もいるだろう。しかし、これは取り返しようがなく、進学に必要だったお金で、忘れるべきだ。この10万5000円がサンクコストである。

 

 

 

 

 

 株式投資も同様だ。10万円で購入した株が下がり、5万円の損が出たとする。この5万円を取り返そうと、同じ株を底値と思われる時点で10万円分買った。そうすれば平均取得価格が下がるので気が楽になる。しかし、これは間違い。取り返しのつかない損(サンクコスト)にこだわって買い増ししてしまったわけで、経済学的には間違いだ。とっととあきらめて他の投資を考えたほうがよかった。5万円の損失は投資の学習代だと考えて忘れたほうがいい。