踊り場の中国企業は、「祖業」発展させ成功した日本企業を見習え古き良き建物を維持しながら中身を一新して、上海のビューポイントになっている「上海新天地」

 イノベーション──。この言葉は、中国で今、最も心に響くキーワードの1つとなっている。

 というのも、長年2桁成長を維持してきた中国は、ここにきて経済成長が踊り場に来て、ある種の疲労感が出始めているからだ。経済の“分母”が大きくなった今、経済成長の減速はある意味、自然な成り行きではあるが、廉価な労働力を駆使した大量生産による経済促進策も効果を失いつつある。

 そうした状況において、中国では政府も企業も「イノベーション」に活路を求める方向へと転換し始めた。こうした選択自体は間違っていないが、看過できない問題もある。

 まず、経済を理解していないにもかかわらず、上層部に評価してもらえる実績を求める地方の役人たちが、「イノベーション」を「新規事業」と捉えてしまう傾向があることだ。これは、かなりの企業の経営者たちにも同じ傾向が見られる。

 その結果、これまで何十年もやってきた仕事を放り出してしまい、話題の産業や新規事業に飛び付いてしまうのだ。そうした事業は、銀行の融資が受けやすいほか、政府からの支援を得やすいことも背景にある。