今回は東北の復興支援について、あらためて考えてみる。震災から半年が経ち、支援活動も曲がり角にきている。泥出しなどのボランティア活動もまだまだ必要だが、現地の人たちも支援活動を行なっている人間の多くも、意識と行動は“復興フェーズ”に移行している。

 しかし、実際に復興支援活動をしてみると、なかなか一筋縄ではいかないことがわかる。そもそも東北は、震災がなくても2050年くらいには人口が半減するだろうと言われていた。若者の流出も激しく、釜石のある20代女性は、「小中学校の頃には同級生が76人いたが、震災直前の時点で地元に残っていたのはたったの5人しかいなかった」と語る。

 陸前高田市では震災後、約6000人が流出。市長は明言しないが、震災で亡くなった方を含めると人口は半減したのではないかと推測される。三陸沿いの町はどこも高齢化率が35%くらいだったが、震災後に転出するのは30代、40代の働き盛りの人が多いので、現在の高齢化率は50%を超えているだろう。

 政治家も識者も支援活動を行なっている人たちも、誰もが口を揃えて東北復興には新しい産業の創出が必要だと言うが、ではこのような土地でどうやって新しい産業を作るのか、若者の流出を食い止め、域外から人が流入してくるような新しい産業とは何か、具体的なプランはまだ誰も提案できていない。

漁師になりたがらない
東北の若者たち

 東北復興というと、多くの人は漁業支援を頭に浮かべる。漁業は東北の重要な産業だし、支援すべきである。しかし、岩手県と宮城県の漁業生産高は合わせて約1200億円。両県のGDPは合わせて約12兆円であるから、1%にすぎない。これでは、復興の切り札とするには規模があまりにも小さすぎる。

 人の問題もある。漁師になろうとする若者がいないのだ。津波で多数の漁師が亡くなり、あるいは漁船や設備を破壊されたこともあり、廃業する高齢の漁師も多い。三割の漁師が亡くなったり、廃業したりしていると言われる状況で、若者の漁業への流入は漁業復興に不可欠だが、関心はあまりにも低い。

 大船渡市では、新しく漁師になる人を募集したが、応募者は1人もいなかったという。若者が流入してこない産業は、いくらお金をつぎ込もうが支援しようが、長期的な復興は不可能である。

 漁業は儲からないから新しい人が入ってこないのではないかと思うかもしれないが、実はやり方によっては漁業は儲かる仕事だという。また、農業も儲からないイメージの強い産業だが、近年は若者の関心も高い。農業支援の団体が多数立ち上がり、農業生産法人に就職する大学生も増えている。林業に関心を持つ若者も増えていて、若い男女が森の中でチェーン・ソーを振り回しながら合コンを行なっていたりする。しかるに、漁業に関しては、目立った活動しているのはウギャルの女の子たちくらいしかいない。