会議やワークショップの生産性を高めるには、ファシリテーションの技術が欠かせない。では、ファシリテーターはどんな技術を使って議論をリードしているのか。森時彦氏の最新刊『ストーリーでわかるファシリテーター入門』(小社刊)の解説より、ファシリテーターに求められる思考の技術を3回にわたって特別公開する。

〈技術3〉
時短型アイスブレークとしての「思いだし」

 2003年にNPO法人日本ファシリテーション協会を数名の仲間と一緒に設立しましたが、そのときに最初に行ったことの1つがアイスブレーク集をつくることでした。それが、その後も継承・グレードアップされて同協会のホームページに残されているので、関心のある方はぜひご覧ください。
→日本ファシリテーション協会ホームページ「アイスブレイク集」

ファシリテーターに求められる思考の技術(中編)森 時彦(もり・ときひこ)神戸製鋼所を経てGEに入社し、日本GE役員などの要職を務める。その後、テラダイン日本法人代表取締役、リバーサイド・パートナーズ代表パートナーなどを歴任。現在はチェンジ・マネジメント・コンサルティング代表取締役として組織活性化やリーダー育成を支援するかたわら、執筆や講演等を通じてファシリテーションの普及に努めている。ビジネス・ブレークスルー大学客員教授、日本工業大学大学院客員教授、NPO法人日本ファシリテーション協会フェロー。

 さて、私の場合、時間制限が厳しいビジネスシーンでファシリテーションを行うことが多く、あまりアイスブレークに時間を使いたくないという気持ちがあります。

 そこで、主人公の南里マリコが最初のワークショップで行った、「『良い店』と聞いて、具体的にどこを思いだしますか?」という質問をアイスブレークとしてよく使います。これを「思いだし」アイスブレークと呼んでいます。

 自分にとっての「良い店」には、正解とか間違いはありません。また思いだすという行為は、店を良くする方法を考えるよりはるかに簡単です。そういう気軽な話題について話しあうことが、アイスブレークとなって場をなごませる働きをしてくれます。

 そして同時に、これが次の「良い店の特徴」「良い店とは何か」という難しい命題を考える頭の準備運動にもなっています。一石二鳥になるので、「思いだし」ワークは、時短型のアイスブレークなのです。

■「思いだし」アイスブレークの応用例

「○○と聞いて、具体的にどこを思いだしますか?」という問いかけは、いろいろな場面で応用できます。○○には、たとえば「尊敬される会社」「強いチーム」「学習する組織」「やる気になるリーダー」などいろいろなものを入れることができ、何にでも使えます。