■ブレストに役立つ時短型アイスブレーク

 アイスブレークの話をしたついでに、もう一つ、その後の議論に直結する時短型のアイスブレークをご紹介しておきましょう。

 新しい技術的な解決策、新製品、コピー、何でもかまいませんが、何か新しいアイデアを生みだすための創造的なブレーンストーミングを行うときには「思いだし」よりクイズの方が役に立つことがあります。

 たとえば、図の9つの点を、4本の直線の一筆書きで結ぶことができるか、といったような問いです。ちょっとご自分でも考えてみてください。この問題を解くためには、固定観念にとらわれずに視点を変え、考え方を柔軟に転換してみる頭の使い方が求められます。

「思いだし」がアナロジー発想をうながすアイスブレークだとすれば、このようなクイズは、頭の柔軟性を高め飛躍力をうながすアイスブレークと言えるでしょう。

 そういうアイスブレークの私のネタ本は、多湖輝の『頭の体操』シリーズです。全23巻に2000問もの頭を柔らかくする問いが集められているので、ネタ切れになることはありません。

 ブレーンストーミングの前に、この中から求められている発想の転換や思考の飛躍、視点の切り替えに役立ちそうな問いを3問程度選んでやってみる。すると参加者の目の輝きが変わり、身体の動きも活発になって抜群の効果を発揮します。そういうことを何度も体験してきました。

 多湖先生は惜しくも一昨年(2016年)に亡くなられました。私はこの本の1966年の初版以来の愛読者です。文字通り私の発想力を鍛えてくれた恩人である先生に、この場を借りて哀悼の意と御礼を申し上げたいと思います。

〈技術4〉
具体論と抽象論の往復

 私がワークショップをデザインする上で指針としていることの1つに、「具体論と抽象論の往復」ということがあります。

 実は、先ほど書いた「思いだし」はその一つなのです。いきなり「どんな店舗コンセプトがいいか?」といった抽象度の高い質問をすると議論についてこられない人がいます。あるいは話しあっているように見えても、単なる机上の空論で、いつまで経っても具体論にならない、時間のムダということも少なくありません。