頭のいい人は、暇な時間があると、自分を無価値に感じると言います。暇な時間をムダなことに費やすことをよくないとする古くからの言葉も存在します。大人だって、時間の使い方に苦労しています。子どもはなおさらです。では、どういう力を育ててばいいのでしょうか。
46年間、教育一筋――都立中高一貫校合格者シェア52%で業界1位、都立高合格者数1位を獲得した東京都随一の学習塾「ena」の学院長である河端真一氏の最新刊『3万人を教えてわかった 頭のいい子は「習慣」で育つ』がいよいよ発売。結果を出すことで証明してきた、その教え方・学ばせ方は、まさに、最強にして最高の子育て論であり、塾教師としての立場でできることではなく、家庭にいる保護者ができることをまとめたのが本書です。
本連載では、子どもたちにとって貴重な時間を保護者としてどう接するか、保護者の対応次第で子は変わるということを実感していただき、今すぐできることを生活に取り入れてください。この夏休みからぜひ取り組んでほしいことを、本書から一部抜粋し、やさしく解説していきます。

子どもがこれから進学し、
社会に出ていくうえで必須のスキル

「小人閑居して不善を為す」という言葉があります。

 つまらない人間ほど、暇な時間があるとろくでもないことをする、という意味です。

 大人でも、休日にやることがないからといって、パチンコに行ったり麻雀をやったり、つまらないことに時間とお金を使ってしまう人がいます。

 子どもも同様です。子どもは暇な時間ができると何をしているのでしょうか。保護者が理想とするように、読書に熱中したり、自発的に勉強したりする子は多くありません。

 だいたいは、部屋で漫画を読んだりテレビを見たりして過ごします。友だちと遊びに行くというので、外で体を動かしているならいいかなと思ったら、ベンチに座って黙々とゲームをやっているだけということも。まさに「不善を為す」です。

 そうさせないためには、保護者が子どものスケジュールを決めてしまえばいいのです。

 保護者が勝手にスケジュールを入れると子どもの自主性が育たない、という人もいますが、そんなことはありません。いくら予定を詰め込んだとしても、すき間時間は生まれますから、その時間は子どもの自由にさせてあげましょう。

 すき間の時間しか与えられないと、「この大切な時間に何をやろうか」と自分で考えるようになります。忙しい毎日を過ごすなかで、スケジュール力、タイムマネジメント力が養われるのです。

 スケジュール力は、子どもがこれから進学し、社会に出ていくうえで必須のスキルです。

 受験で、合否を分ける最も大きな要素は勉強量(時間)です。結局トータルで何時間勉強したかで、合格か不合格かが決まります。

 正確には「勉強量×密度(質)」なので、密度を上げることも大切なのですが、それはなかなか難しい。量を増やすだけなら工夫せずにできるし、確実に効果が上がります。

 子どもたちからも保護者からも、「勉強にあまり時間をかけずに要領よくやって合格する方法はありませんか?」と聞かれることがあります。

 そんな方法があったら教えてほしいものです。勉強量を確保せずに合格することなどあり得ないと断言できます。

 入試で合格するなら、まず勉強量を確保することが大事。そしてそのためには、スケジュール力が欠かせないのです。もちろん子どもがスケジュール管理をできるわけではないので、保護者がリードしてスケジュール作成や進捗管理をサポートしてあげましょう。

 受験における年間のスケジュールを考えたときに、一番大事なのは夏休みです。

 夏休みではない平日には1日3時間くらいしか勉強時間は取れませんが、夏休みなら1日に12時間は勉強できます。夏休みは40日ほどありますから、合計480時間。つまり夏休みの間に、平日の160日分(約5ヵ月分)の勉強ができる計算です。

 ですから、よく聞く「夏を制する者は受験を制す」は事実なのです。夏に勉強の絶対量を確保すれば、勉強量が少なかった子との間には大きな差がつくということです。

 夏休みと同時に冬休みも大事です。冬休みも14日くらいありますから、かなりの勉強量を確保できます。それに、入試の時期に近い休みという点でも重要です。ところが、クリスマスと正月という誘惑があり、受験勉強のスケジュールが狂いがちです。

 その結果、受験に失敗してしまうケースも多いのです。時間を確保できずに受験に失敗するミスを犯さないためにも、夏休みや冬休みの大切さをきちんと理解させて、1年間のスケジュール作成をサポートしてあげてください。

 私は40代で大学院に入ったのですが、そのときに驚いたのは、せっかく大学院に来ても4人に1人くらいしか博士号を取ることができないという事実です。その理由は、スケジュール管理ができないから。博士論文を期限通りに提出できない人が多いのです。

 最難関大学から来た優秀な大学院生でも、スケジューリングできない人は多数いました。

 勉強ができるということと、スケジュール力があるということは別なのだと知りました。ですから子どもに対しても、小学生のうちから長期的なものの進め方、進捗管理の仕方を教えてあげてください。

 スケジュール力とは目標達成をするスキルです。一度身につければ、勉強に限らずどんな分野でも成果が出せる人材になれます。

【POINT】
長期的なものの進め方、進捗管理の仕方を教えると、
スケジュール力、タイムマネジメント力が養われる。