決算JALANAPhoto:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

10月29日にANAホールディングス、10月31日に日本航空(JAL)が2020年3月期中間決算を発表した。米中貿易摩擦などを受けての世界経済の減速感や日韓関係の悪化などが重なり、両社ともに通期予想を下方修正したが、その修正内容には「差」が生じていた。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)

米中貿易摩擦、日韓関係悪化が
ビジネス客にも訪日客にも響いた

 国内エアライン大手のANAホールディングス(以下、ANA)と日本航空(JAL)が2020年3月期中間決算で、そろって通期業績見通しを下方修正した。しかし、修正内容には2社の間で差が出た。ANAが売上高、利益ともに当初予想から下方修正したのに対し、JALは利益のほうは当初予想を据え置いた。なぜこの差が生まれたのだろうか。

 両社は近年、航空需要の拡大や原油安などを背景にイケイケドンドンで業績を拡大してきた。ところが米中貿易摩擦などを受けての世界経済の減速感、日韓関係の悪化などが重なり、これらがビジネス需要の弱含み、アジア訪日客(インバウンド)の減少を引き起こした。かつての世界同時多発テロやSARS(重症急性呼吸器症候群)、リーマンショック時ほどの急ブレーキではないが、航空ビジネスにおいて減速感が出始め、先行きには不透明感が漂う。

「潮目が変わったのは7月からだ。世界経済悪化の影響が色濃く出ている」とANAの福澤一郎グループ経理・財務室長は言う。

 ANAは近年、国際線の大幅拡大に伴い、売上高2兆円を超えるなど業績を伸ばしてきた。得意のビジネス路線では出張客から高単価を維持してきた。そこに逆風が吹き、欧米路線では出張客が企業業績を反映してビジネスクラスからエコノミークラスに「ダウングレード」するという流れにより、単価の下落が目立ち始めた。

「日銀短観では大企業製造業の景況感が3四半期連続、悪化している。IMF(国際通貨基金)では世界経済の見通しを5回連続、下方修正している。こうした全体の景況感が、国際旅客に出ている」(福澤氏)。

 JALも同様の影響を受けている。「第2四半期に入ってから、日本発のハイエンドのお客が伸びていない」とJALの菊山英樹財務・経理本部長。「欧州系エアラインが供給拡大していることもあり、需給が緩くなっている」ことが背景にあり、「対策としては海外発のハイエンド客を増やそうとやっているが、道半ばだ。イールドマネジメントをしっかりやるほかない」と言う。

 20年3月期の中間決算で見ると、ANAは前年同期に比べ、売上高は増収を確保したが、営業利益は263億円の減益。下期も引き続き、世界情勢が不透明であることから、売上高予想を当初よりも600億円減収の2兆0900億円、営業利益、経常利益、当期純利益もそれぞれ100億~200億円規模の減益に下方修正した。

 JALも中間期決算は、前年同期比で増収となった一方、営業利益は155億円の減益だった。通期見通しについては国際線の今後の情勢の見極めが困難との理由で、売上高を当初予想から470億円減の1兆5160億円に下方修正。ただし、営業利益、経常利益、純利益は据え置いた。「収入面での挽回は不透明だが、費用で挽回する。今の時点で変更する必要はない」と菊山氏。全社一丸となってコスト削減を実行することで、当初予想数字を確保するという。