文系のなかには、理系コンプレックスを抱えている人は少なくありません。しかし、「読書においては文系がまさっている」と、この本に出合うまではそう思っていました。しかし……。新刊『理系読書 読書効率を最大化する超合理的サイクル』は、理系が実践している合理的な方法を読書に応用した技術です。著者は、東大生500人以上、医大生を2000人以上輩出した元駿台予備学校ナンバーワン化学講師で、バリバリの理系。本をまるで理科の実験のように扱い、最短最速でスキルハントする。インプットとアウトプットが速すぎて、これにはもうお手上げです。「速く読むこと」や「大量に覚えること」を目的とする読書術とは、一線を画した内容。最短最速で著者の経験知やノウハウを自分の頭にインストールし、自分の問題解決に役立てる至極の読書術です。

【一度読んだ本、どうしてる?】骨の髄まで本を活用する「読書メンテナンス術」Photo: Adobe Stock

「ジャンルまとめ読み」と「著者まとめ読み」

 皆さんは読み終わった本をどう扱っていますか? 私の場合、読み終わった本は本棚に入れておき、時間を空けた後に、まとめ読みするようにしています。

 本は1回読めば十分で、短期間に何度も読むことはよほどのことがない限りしませんが、時間を空けてから読み返すことは定期的に行っています。いわゆる「読書のメンテナンス」です。

 定期的に読み返すことで、内容を再確認できるのはもちろんのこと、読み返すことで新たな気づきを得られるときもあるからです。

 私のまとめ読みの方法は、次の2種類です。

1.ジャンルまとめ読み

 読了した本の中でも、中長期的に使いたいと思った本をとっておきます。

 そして1ヵ月に1回程度、何らかのジャンルを決めて本を集め、過去に付せんをつけた部分や、目次をざっと読んで気になった部分を読みます。

 私が最近まとめ読みしたのは、人工知能を中心とした最新テクノロジー系の本と、マーケティング関連の本です。

 まとめて読んだことで、自分がこれまでどんな問題意識を抱えていたか、その問題意識は解決できたのかが、よりクリアになりました。

 また、テクノロジー系の本の場合、まとめて読むことで、「あの本で著者が言っていたことは、ここに関係してくるのか」とテクノロジーどうしの横のつながりが見えてきます。

 結果、点と点が線でつながり、そのジャンルに対する理解を深めることができます。私の場合、5~10冊をセットで、30分から1時間くらい使ってジャンルまとめ読みをすることが多いです。

2.著者まとめ読み

 読了した本の中で、同じ著者の本をまとめて読むこともあります。私の場合は、半年に1回くらい、著者まとめ読みをやるようにしています。

「著者」を1つのコンテンツとみなすと、本1冊は、「部分」にすぎません。一方、著者の本をまとめて読めば、著者の考え「全体」に触れることができます。著者まとめ読みは、著者の頭の中全体を自分の脳にインストールする感覚に近いかもしれません。

 たとえば最近では、芸術家の岡本太郎氏、『考具』著者の加藤昌治氏、メンタリストDaiGo氏、立教大学教授の中原淳氏などの本をまとめ読みしました。

 著者まとめ読みのときは、目次はもちろん、付せんを貼っていない箇所も読むようにします。そのため、ジャンルまとめ読みよりも多くの時間とエネルギーを使います。5冊くらいの読書で2時間以上かかることもあります。

新たな気付きが出てくる可能性

「ジャンルまとめ読み」「著者まとめ読み」をするなかで、新たな課題や検証したいことが出てくることもあります。そんなときは第3章で紹介したフォーマットに追記し、実験を行います。

 むしろ、新たな気づきが出てきて当然です。過去の自分よりも今の自分のほうが新しい知識が増え、問題意識も変わっているからです。

 したがってまとめ読みするときも、目次チェックは忘れないようにしましょう。目次をチェックすることで、過去の自分と今の自分で、問題意識が異なっていることを発見できる場合があります。

 まとめ読みをすることで、過去には心に響かなかった言葉が、今の自分には響いてくることもあります。

 特に良書は、読むたびに新しい気づきや視点を与えてくれます。私の場合は岡本太郎氏の本がそんな存在です。

 私にとっての本棚は冷凍庫。食材(本)がたくさん詰まっていて、時々それを解凍して調理すると、思いがけずおいしい料理が作れます。

「もう使わない」と判断できる本は、読了後すぐに捨ててもかまいませんが、「将来的に読み返したいかも」と思った本は保管しておくことをお勧めします。

 本を長期保存しておけば、長い人生のうちに何度でも味わうことができるからです。