スマート農業の可能性(第2回):新型コロナ禍の労働力不足に対応する緊急実証事業

農林水産省

新型コロナの感染拡大は、農業分野にも深刻な打撃を与えた。外国人技能実習生の入国制限による栽培現場での労働力不足の顕在化だ。この事態に農林水産省は、「スマート農業の構築」の一環として「労働力不足の解消に向けたスマート農業実証」事業の緊急実施を決め、全国24の実証地区で即効力のある技術の検証を進めている。

「労働力不足の解消に向けたスマート農業実証」の緊急展開

 新型コロナウイルスの感染拡大は、2020年の農業経営にも深刻な打撃を与えた。

 真っ先に課題として浮上したのが、外国人技能実習生が入国できず、栽培の時期を迎えて急速に人手不足が深刻化したことである。

 農業分野で働く外国人の総数は約3万5000人で、このうち3万1900人が技能実習生で占められている。15年と比べると外国人の雇用者数は全体で1.8倍、技能実習生は1.9倍に増えている。もはや日本の農業は、「外国人材を受け入れることは農業の生産基盤を維持・強化する上で不可欠」(「令和元年度 食料・農業・農村白書」)となっている。

 また繁忙期にパートタイマーとして作業を手伝っていた地元の主婦が、学校が一斉休校になった子どもたちの世話のために手伝えなくなったことも人手不足に拍車を掛けた。

 緊急事態に対して農林水産省は、人材確保のための交通費や宿泊費、労働保険料などの助成を決め、法務省もまた新型コロナ禍の影響で解雇された他産業の外国人技能実習生の農業分野への就労を認める特例措置を決めた。

 同時に農林水産省は、「スマート農業の構築」の一環として、「労働力不足の解消に向けたスマート農業実証」という緊急プロジェクトを策定し、20年度の第1次補正予算として約10億円を計上。全国から35あった応募のうち、24の委託地区を決めた。

実証事業では、生産基盤の強化につなげるために学生の知識習得も大きな目標として掲げられた。写真は、農薬散布ドローンの操縦講習会に臨んだ帯広農業高校、帯広工業高校(北海道)の学生たち

 農林水産技術会議事務局研究推進課の長谷川明宏調査官は、「今般の緊急プロジェクトは、急速に深刻化する人手不足をテーマとして、即効性のある取り組みを支援することにしました。さらに、産地の労働力不足に対応した強い生産基盤の構築にもつなげるために、農業大学校や農業高校などと連携して、学生たちに農業生産を学ぶ機会を提供しながら、スマート農業の実証を目指すことを目的としました」と説明する。

 

農業学生に実践学習の場を与え、生産基盤の強化にもつなげる

労働力不足の解消に向けたスマート農業実証で、即効力として期待される省力化スマート農業技術。写真は「搾乳ユニット自動搬送装置 キャリロボ」(画像提供:オリオン機械)」

「労働力不足の解消に向けたスマート農業実証」の緊急プロジェクトの委託を受けた24の地区では、キャベツやアスパラガスなどの露地栽培、また酪農など労働力不足が著しい作目を対象に、比較的効果が表れやすい技術の実証が進められている。

 例えばドローンによる農薬散布やAIを搭載したキャベツの自動収穫機の活用、搾乳ユニットによる自動搬送装置の活用などだ。

問い合わせ先
農林水産省
農林水産技術会議事務局
https://www.affrc.maff.go.jp/

 

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