平井陽一朗(BCGデジタルベンチャーズ マネージング・ディレクター&パートナー ジャパンヘッド)平井陽一朗(BCGデジタルベンチャーズ マネージング・ディレクター&パートナー ジャパンヘッド)

前回は、変革を実現するために欠かせない人材として、エクスペリエンスデザイナーエンジニアプロダクトマネージャーの重要性と獲得方法を紹介した。しかし、選りすぐりの人材を獲得したとしても、彼らが能力を十分に発揮できる土壌がなければ、継続的に変革を起こすことは難しい。今回は企業変革を「やってみる」のではなく「やり切る」ための、そしてその姿勢が「ぶれない」ようにするための土壌づくりについて考えたい。

再掲:企業変革 4つの処方箋
処方箋1.スピード感をもって「勝負する土俵」を見極める
処方箋2.必要な組織能力を見極め、獲得する
処方箋3.獲得した人材が能力を発揮できる土壌をつくる(今回)
処方箋4.ぶれずに、やり続ける(今回)

獲得した人材をいかに維持するか

 大企業が抱える課題の一つに、エンジニアやデザイナーといった新しいケイパビリティを持った人材がなかなか組織に定着しないことが挙げられる。私は多くの経営者から「優秀なエンジニアが1年も経たずに辞めてしまった」「既存の事業部とうまく協働できない」「期待したほど活躍しない」といった悩みを聞いてきた。今回は、いかに彼らを大企業に迎え入れ、既存のカルチャーと融合させ、能力を発揮させ続けるかについて述べたい。

 優秀な人材が大企業を離れてしまう原因はさまざまだが、典型的な理由には以下のようなものがある。

(1)自分を成長させられる環境がない
(2)仕事が面白くない、やりがいのある仕事がない

(3)給与や待遇が折り合わない
(4)カルチャーが合わない、「外様」扱いされる

 ひとつずつ解決していこう。