退職金投資で失敗する、三つの危険な勘違いPhoto:PIXTA

 これは筆者が以前から主張していることだが、投資の経験のない人が退職金をもらっていきなり投資を始めると失敗することが多い。この理由は三つの大きな勘違いが存在するからである。そして、この勘違いはよほど気を付けないと逃れることが難しい。そこでどういう勘違いが存在するのかを解説した上で、逃れるためにはどうすればよいかを考えてみたい。

勘違いその(1)
公的年金だけでは生活していけない

 多くの人は実際に公的年金を受け取り始める65歳までは、その仕組みや支給金額についてあまりよく知らないことが多い。特に数年前に話題になった「年金2000万円問題」のような大きなミスリードによって、「年金だけでは生活できない」と思っている人は多いのだろう。

 ところが、これは大きな誤解である。自営業者なら公的年金だけで生活するのは苦しいと思うが、サラリーマンを退職した人であれば、必ずしも公的年金だけで生活できないということはないのだ。

 2019年に行われた「国民生活基礎調査の概要」(厚生労働省)※1によれば、所得に占める公的年金の割合が100%という世帯は48%となっているので、全世帯の約半数は公的年金だけで生活をしているのである。さらに所得に占める公的年金の割合が8割以上という世帯も加えるとその割合は60%を超える。事実、筆者は現在69歳だが公的年金は一切受け取っておらず、私が経営する会社から公的年金に相当する金額を給料として受け取っているが、それで普通に生活はできている。

 そのあたりの状況が正確に伝えられないままに金融機関がいたずらに年金不安を煽り、投資に誘引しようとしているのが実情なのである。しかしながら、投資はそれほど簡単でも甘いものでもない。きちんと勉強し、正しく理解した上で始めないと失敗する可能性は高い。年金が足りないからといって、退職金という老後の重要な生活資金をいきなりリスクの高いものにまとめて投資をするというのは、明らかに大きな勘違いといえるだろう。

※1 2019年 国民生活基礎調査の概要 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/03.pdf