メダルPhoto:PIXTA

数々の失態で、日本の五輪組織委員会は、世界から「差別主義者の巣窟」に見えてしまっているだろう。大坂なおみ選手の最終聖火ランナー登用くらいでは、日本の多様性に対する、世界の不信感は払拭できないのではないか。東京五輪の反省を踏まえて、いかに日本がダイバーシティーを進めていくかについて、三つの視点からアイデアを示したい。(芸術文化観光専門職大学教授 山中俊之)

アフリカ系女性も勇気づけた
大坂なおみ選手

「Their country’s diversity is becoming harder to ignore」(筆者訳:日本における多様性は、もはや無視するほうが難しくなってきている)。英Economist紙(7月24日付)の見出しの一部である。

 東京五輪(オリンピックとパラリンピック)の開会式で、聖火の点火はハイチ人の父を持つ大坂なおみ選手、日本選手団の男子旗手は父親がベナン人の八村塁選手。日本人選手の中でもひときわ目立った2人が、日本人以外の親の血を引いていることに世界は注目した。

 筆者は個人的に、聖火を点火する際の大坂選手の髪形にも注目した。

 筆者のウガンダ人の友人(女性)は、「アフリカ女性は、アフロや網状でなく髪を頭になでつける髪形を求められることがある。本来したい髪形ができない」と嘆いていたからだ。その友人は、アフリカ系アスリートの髪形にも以前から大変に注目していた。

 もちろんカリブ海に浮かぶハイチはアフリカの国ではない。しかし、ハイチ人の先祖の多くはアフリカから移ってきたといわれる。大坂選手の姿は、全世界のアフリカ系の女性にも好意的に受け取られたのではないか。

 世界の人々は、「日本も意外とmultiracial(多人種からなること。複数の人種の血筋を引いていること)なんだな」と思ってくれたかもしれない。

 しかし、喜んでばかりはいられない。