わたしたちはいま、スマホの普及に伴う情報過多とコロナ禍によって多くのストレスを日常的に抱え、「いつも疲れている」「なんとなくダルい」といった「脳の疲れ」が原因の症状が出やすくなっている。
そこで読んでおきたいのが、シリーズ累計28万部を突破しているベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』だ。イェール大で学び、精神医療の最前線である米国で長年診療してきた精神科医・久賀谷亮氏が、「脳疲労」を解消できる「科学的に正しい」脳の休め方をストーリー形式でまとめた本書から、今回は一部を抜粋・編集し、メンタルの安定に役立つ思考法をご紹介する。(構成/根本隼)

【精神科医が明かす!】メンタルが不安定な人が陥りがちな思考とは? Photo: Adobe Stock
【ストーリーのあらすじ】脳科学を学ぶために米イェール大学に渡ったナツ(小川夏帆)は、厳しい競争環境にさらされて挫折する。研究への復帰を目指し、伯父が営むベーグル店〈モーメント〉を手伝うことにするが、店のスタッフは疲れ切っていて職場の雰囲気は悪かった。ナツは店を立て直すべく、ヨーダにそっくりな外見のイェール大教授(ラルフ・グローブ)を訪ね、脳と心を休める「最高の休息法」マインドフルネスの極意を教わる。>>第1回から読む

ストレスを溜めこんでしまう「モンキーマインド」とは?

 ヨーダ「うむ、今日は『頭の中のサル』を飼い馴らす方法を教えるとしよう」

 ナツ「え?サル、ですか……?」

 戸惑うナツに向かってヨーダはにっこり笑った。「そうじゃ。ナツのようにいろんな考えに頭が満たされた状態をモンキーマインドという。サルたちが頭の中でうるさく騒ぎまくっとるような状態じゃな。雑念が頭を占拠しておると、脳は疲れやすくなる」

 「脳というのは人間のあらゆる臓器の中でも、膨大なエネルギーを消費する場所じゃからのう。モンキーマインドを脱すれば、脳は本来の力をフルに発揮できるようになる。集中力、判断力、読み書き計算のような処理能力、創造力……そういったものを高めることもできるんじゃ」

自分のメンタルを「整理する」ために必要な思考法とは?

 なるほど、いつも騒々しいナツの頭の中には10匹くらいサルが住んでいそうだ。いったいどうすれば、このサルをおとなしくさせられるのだろう。

 ヨーダ「自分がちょうど駅のプラットホームにいるところを想像してみなさい。そこへ電車が入ってくる。中に乗っているのは『考え』というサルの乗客たちじゃ。電車はしばらくそこに停車するが、君はホームにそのまま留まる。しばらくすると電車は去っていく、サルたちを乗せたままな。次から次へといろんな電車がやってくるが、ナツの立ち位置は変えない。ずっとホームじゃ」

【精神科医が明かす!】メンタルが不安定な人が陥りがちな思考とは?

 この比喩には何の意味があるのだろう?怪訝そうなナツの表情を見て満足げに頷くと、ヨーダは続けた。

 「つまり、大切なのは『考え』に対して傍観者であり続けることなんじゃよ。いいか、人間というのは、あたかも『考え』を自分自身だと思いがちじゃ。とはいえ、本来、自分というのは容れ物にすぎん。駅と電車を同一視するのがバカげているように、自分と雑念を同じものとして見る必要はない」

 「自分の心は電車たちが行き交うプラットホーム。どんなに雑多な種類の電車が入ってこようと、プラットホームは変わらない。そういうイメージを獲得することで、まず自分自身の心を常に片づけられた状態に保つんじゃ」

「自分」と「考え」を区別すると心に余裕が生まれる

 なるほど、たしかに私たちは普段、「考えている自分」と「考えていること」とをあまり区別していない。何かについてくよくよ思い悩んでいれば、まさに自分自身が悩ましいのだと考えてしまう。考えがぐるぐるとループをはじめれば、自分も堂々巡りをしているような気になってくる。

 しかし、サルと一緒に騒がしい満員電車に乗り込んだりする必要などないのだ。自分はその電車の乗客ではない。

 ヨーダ「こんなイメージで心の中に空きスペースをつくることじゃ。実際、心に余裕がある人は、自分と考えを同一視しとらん。どんな考えも、一時的に脳を訪ねてくる客人であって、ずっと頭の中に住みついているわけではないんじゃ」

(本稿は、『世界のエリートがやっている 最高の休息法』から一部を抜粋し、編集したものです)

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