米国ほどではないが「疾病予防」「健康増進」目的でサプリメント(サプリ)を愛用する人が増えてきた。

 昨年公表された厚生労働省のアンケート調査によれば、50代以上の約3割が日常的に健康食品・サプリを利用している。購入時に最も重視するのは、「効能・効果」と「成分含有量」。一方で「安全性」に対する関心は低かった。サプリは無害、というイメージが強いのだろう。

 しかし先月、「JAMA内科学」に掲載された米国の調査研究によると、カルシウム・サプリの摂(と)り過ぎは心臓の健康に悪いらしいのだ。調査では50~71歳の男女、約3万9000人を平均12年間にわたり追跡。期間中に心血管疾患で死亡した男性7904人、女性3874人について背景を分析した。

 その結果、マルチビタミンを含めカルシウム・サプリを1日1000ミリグラム以上摂っていた男性群は、摂取していない男性群と比べ、心血管疾患による死亡リスクが20%高かったのである。

 一方、脳血管疾患による死亡リスクは差が生じなかった。ちなみに、女性群は心血管疾患、脳血管疾患ともにサプリ摂取との関連は見いだされなかった。

 日本人の食事摂取基準(2010年版)によると、男性50~69歳のカルシウム摂取推奨量は1日700ミリグラム。それ以上摂取すると健康被害が出るとされる耐容上限量は、2300ミリグラムである。今回の試験では、食事+サプリの総カルシウム摂取量が少な過ぎても心血管疾患リスクが上昇することが示されている。分岐点は1日500ミリグラムあたりらしい。そういった意味で推奨量はなかなか妥当な線といえるが、上限量は緩すぎるかもしれない。少々意識すれば、食事で推奨量を摂れるからだ。

 代表格の乳製品以外でカルシウム豊富な食材は、豆腐や納豆などの大豆製品とひじきなどの海藻類。その他、緑黄色野菜にも含まれている。朝に牛乳を1杯飲み、昼と夜はみそ汁で和食というメニューで意外と摂れているのだ。晩酌に三角チーズの2個もつまめばなおよし。さらにサプリを追加するなら摂り過ぎにご注意を。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド