十分に甘みがあるのに「カロリーゼロ」とうたわれたドリンクや、脂肪を吸収しにくいなどの特性をうたったトクホ(特定保健用食品)認定製品……。今の日本には夢のような飲料や食品が氾濫していますが、これらは従来では存在しえなかったものであるだけに、食品添加物抜きでは製造できません。果たして、本当に安心して口にできるのでしょうか? ベストセラー『食品の裏側――みんな大好きな食品添加物』(東洋経済新報社)の著者で食品添加物に詳しいジャーナリストの安部司さんと、米ハーバード大学で食品が健康に与える影響について研究中で、『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』を上梓したばかりの医師・大西睦子さんが、一般にはほとんど知られていない驚くべき真実について語り合います。

「カロリーゼロ」なのに、
摂り続けるとむしろ肥満に!?

大西 米国には日本ほど多種多様な市販飲料はない一方で、ミネラルウォーター以外は、緑茶にさえ甘みがついています。つまり、米国人の多くに、甘み中毒の傾向がうかがえます。だからこそ、カロリーゼロをうたったコーラなどダイエット飲料を飲んで糖分の摂りすぎに気をつける人が増えているのですが、果たしてその選択が正しいのか、疑問視され始めたのが米国の現状です。

3世代にわたる安全性は分かっていない人工甘味料や<br />カラメル、乳化剤…本当は怖い市販飲食品の裏側!大西睦子(おおにし・むつこ) 医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究を進めている。

 日本でも「カロリーゼロ」をうたった飲料や食品がたくさん出回っていますよね。でも、それらに用いられている人工甘味料に、肥満や糖尿病の原因となったり、甘み中毒になることで結局は肥満になってしまうなどの“副作用”があることが、日本でほとんど知られていません。

 ラットを用いた実験では、人工甘味料は“肥満ホルモン”とも言われるインスリンや、インスリン分泌を促すインクレチンなどに影響を及ぼすことがわかっています。それに、定期的に摂取していると甘みに対する味覚が鈍って、人工甘味料も麻薬や覚醒剤、アルコールなどと同じ作用で依存症を引き起こします。

 昨夏には、米国心臓協会と米国糖尿病学会が人工甘味料に関する合同声明も出しています。この声明では、「糖類を非栄養甘味料(=人工甘味料)に代えることが、減量や血糖コントロールに有用、とするエビデンスは十分ではない」と明言したうえで、「非栄養甘味料をうまく使って糖類の摂取量を抑え、それによって減量や血糖コントロールなどの有益な効果につながる可能性はある」と、非常に慎重な結論を述べています。

安部 確かに、人間は昔から甘いものが好きで、人工甘味料には常用性や習慣性がありますね。私が8年前(2005年)に『食品の裏側――みんな大好きな食品添加物』という本を書いた頃には、まだ「カロリーゼロ」製品は一般的でなかった。だから、その中では人工甘味料について触れなかったけど、年内に出す最新の著書ではかなり言及していますよ。女性を中心に、多くの日本人は“カロリー恐怖症”だから、「カロリーゼロ」の製品が人気になりやすい。

大西 そもそも、100g当たり5キロカロリーまでなら完全にゼロではなくても、「カロリーゼロ」「ノンカロリー」「カロリーなし」「カロリーフリー」などと表示することが認められていますし、「糖類ゼロ」と書かれていても、多糖類(オリゴ糖・でんぷん・デキストリン)が含まれていることがありますよね。

安部 人工甘味料は砂糖よりもはるかに甘みが強いですが、クエン酸を混ぜると意外とすんなり飲めてしまうから怖い。でも、実はクエン酸は湯沸かしポットの洗浄にも用いるようなシロモノで、けっこうな曲者です。水筒にスポーツドリンクを入れていたところ、その中に含まれていたクエン酸がアルミと化学反応を起こして銅が溶け出し、知らずに飲んで目眩や吐き気が生じたというケースもあります。

注釈:クエン酸は多くの飲料に使用されている。炭酸水にクエン酸と砂糖を加えると、いわゆるサイダーになる。