2008年4月、日本の四年制私立大学の半数近くが定員割れに直面した。08年、日本の18歳人口はついに123.7万人にまで減少。1992年の204.9万人を頂点に下がり続けている。大学が講じる穴埋め策の一つが「留学生集め」だ。

 日本学生支援機構の調べによると、アジア地域からの留学生(留学生ビザを与えている学生)は、07年には留学生全体の92.4%を占めた。うち、中国・韓国・台湾からの留学生が約8割近くに達している。

 中国人留学生が増加する勢いはユネスコの資料(*1)を見てもわかる。07年は35万人の中国人留学生が学位取得を目的に海外の大学に留学し、さらに20年以内には64万5000人に達すると推計されている。その中国人留学生を虎視眈々と狙って国際間競争が展開している。2000年以降、中国人留学生は争奪戦の対象となり、イギリス、フランス、シンガポール、アメリカなどが、国を挙げて数々の政策を打ち出すようになったと言う。(*2)

 日本もまた、“待ちの営業”から一転した。80~90年代は黙っていても中国人留学生が来たものだったが、少しでも良質な、できれば優秀な中国人留学生を獲得したいと、有力大学が北京などに事務所を設け、海外入試を実施するなど、積極的に学生獲得に乗り出すようになった。

 だが、日本の中国人留学生は05年の8万0592人(留学生総数は12万1812人、数字は日本学生支援機構)をピークに2年連続減少、07年には7万1277人(日本の留学生総数は11万8498人)とピーク時から11・5%以上減少した。要因には「入国管理局による引き締め」(日本学生支援機構)が考えられる。

大学で日本語科を目指すのは
他にどこも入れなかった学生

 「日本と中国の経済格差が激しかった時代は、誰もが中国を脱出しさえすれば豊かになれると思っていました。だから上海人の間でも日本留学は大変人気でしたが、上海人全体の生活が底上げされ、富裕層が増えた今、事情は20年前とはだいぶ異なります」と、上海平和クリニックの医師は話す。彼女は20年前に日本留学し、現在は日本語が話せる医師として、上海在住の日本人から多くの信頼を寄せられている。

 最近、中国内でも大学の教育環境が格段に整備され、また富裕者層が拡大する中、さらに上を目指す学生が増えるようになった。

 「中国の学生の間では、1位:英語、2位:独語、3位:仏語、4位:韓国語、最下位に日本語がランキングされる。英語科にもどこにも入れなかった学生が、仕方なく日本語科を選ぶんです」と、清華大学で教鞭をとる杉山定久客員教授(南富士産業(株)代表取締役社長)は話す。確かに08年の世界の大学トップ20校のうち13校がアメリカ。誰もがアメリカ留学を希望していることは想像に難くない(*3)。