「戸山」と「青山」が2強の旧第2学区
旧第2学区を見ると、一番手校に新宿と渋谷の学校が並び、二番手校には目黒の学校が集まっている。とはいえ、偏差値の差はそれほど大きくない。その点、世田谷にはこれぞという進学校が見られないのが特徴だろうか。
偏差値だけを取り出してみれば、学校群で同じ22群だった戸山(旧制4中)と青山(旧制15中)はいまでも同様の水準にある難関都立高である。他の群ではレベル差のある学校が組まされた例が普通に見られたことを考えると、ここの受験生は恵まれていたのかもしれない。両校とも、現在7校しか指定されていない都の進学指導重点校である。青山は満たすべき水準に達していない時期があり、指定からはずされそうな危機も経験している。
自主・自立・自由を大事にしてきたこの2校の校風はけっこう異なる。それは現在の校長のキャラクターの差が体現しているかもしれない。実直の戸山、洒脱の青山――という感じだろうか。
日比谷が暗黒の時代に、東大合格数で全国トップ水準を維持して踏ん張っていた戸山のいまのセールスポイントは、キャリア教育の一環として医師を目指す生徒への「チームメディカル」にある。2016年から導入され、入学時に20~25人程度の希望者を募る。条件は、医師になりたいという意欲と1日3時間以上の自主学習を継続することだ。特別なクラス分けはしないで、このメンバーは土曜や放課後に集まる。受験は団体戦ということで、同じ志を持つ生徒が集まるサークル的な活動といえるだろうか。
他にも、2019年からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)4期目の指定を受けたことから、高1からSSHクラスを2クラス(80人)設けているなど、理系志向を打ち出していることは間違いない。
とはいえ、「自主・自立の精神」「自由な校風」を掲げており、卒業生もその点にこだわりを見せる。文化祭「戸山祭」では、1年は展示、2年は演劇、3年は映画(!)を制作してクラスで競う。生徒会がサイトを持ち、学校説明会も主催するほどだ。また、『五体不満足』の乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)氏を生徒として受け入れた懐の深さも戸山の真骨頂といえる。