ベスト10入りした栄光学園(神奈川県鎌倉市)

激変したベスト50校の顔ぶれ

 2021年に引き続き新型コロナ禍での実施となった22年大学入試では、例年見られないほど激しい動きが顕在化した。「21年のランキングでは、最近目にしたことがないほど“下克上”が起きている」と昨年書いたが、22年のランキングはそれ以上に動きが大きかった。21年のベスト50校のうち19校はランク外に去っている。昨年、女子校で唯一ランク入りしていた東京の桜蔭は、46位から85位に後退している。

 今年、50位までに新たにランク入りを果たした学校は24校もある。50位は同値で6校あるため、ベスト50校は実際には55校となり、4割強が入れ替わった。「国公立100大学合格力」全国ランキングの19年20年21年の過去記事を参照しながらご覧いただくとより興味深いだろう。

 この「国公立100大学合格力」は、東京大や京都大といった超難関大学の合格者数だけで左右されるものではない。対象となる国公立100大学で、卒業生が全体としていかに多くの合格を勝ち取ったかが反映されるため、超難関進学校の序列を示すようなランキングにはなっていない。

 国公立大志向の強い関西圏が例年上位を占め、“西高東低”が常態化している。早慶など有名私大や私立医科大の多い首都圏での実態を見るためには、今後公開予定の「難関私立大学」と「国公立医学部」の合格力ランキングも合わせ見て、総合的に判断していただきたい。

 これはいずれの合格力ランキングでも同様だが、卒業生数が極端に少ない高校の場合、1人の合格が大きく順位を変動させる要因となる。ここで言えば、3位の東京藝術大学音楽学部附属音楽がそれに該当する。1学年40人程度と極小規模で、国立大附属では唯一、概ね9割が系列大音楽学部に進学している。数人の卒業生が私立大に流れたりするだけで大きく順位が変動するので、ここは例外的な存在となる。

 以上を前提に、改めてベスト10を見てみよう。1位東大寺学園(奈良)の強さが今回も維持されている。灘がこれに次ぐ。5位甲陽学院、6位開成、10位栄光学院と、私立中高一貫男子校が半分を占めている。共学校では、9位の久留米大学附設を除けば、残り3校はいずれも大阪府立の進学重点対象であるグローバルリーダーズハイスクールとなる。

 公立高校については、全国公立高校「国公立100大学合格力ランキング」を予定しており、そこで詳しく触れたい。県下不動のトップ校が、今年は結構ランクダウンしていることに驚かれるだろう。

 20年大学入試の受験生は、リーマンショック後の中学受験が低調で公立志向が強まっていた時期の世代である。その余波は22年の大学受験でも見られる。ベスト50で見れば、地方の県立名門高校を中心に、21年は7割が、22年は6割が公立校で占められている。

 一方で、新型コロナ禍の影響も見過ごせない。特別措置法が成立したのは20年3月13日であり、20年入試はぎりぎりで緊急事態宣言などの影響を受けずに実施された。しかし、21年と22年はコロナ禍の制約に加えて、大学入学センター試験から大学入学共通テストへの切り替えも重なった。

 受験生は志願校の選択だけでなく、どの選抜入試を選ぶかでも悩むことになる。安全志向から年内に合格が得られる私立大に流れる動きが強まり、その分、国公立大受験からの撤退も見られた。そうした先輩たちの姿を見ていた22年の受験生もまた、現役志向・地元志向を強めながら、進学先を選ぶ傾向が見られた。これも、この合格力ランキングの変動要因となっている。

 こうした背景については、短期集中連載「2030年の大学入試」も参照していただきたい。