80校ほどある定額“受け放題”プラン採用校
東京都内にある私立高校の事業活動収支状況を見ると、支出の3分の2を人件費が占め、教育研究経費は4分の1ほどとなっている。一方、収入は授業料など生徒からの納付金が半分強を占め、補助金も4割近い(中学では3割弱)。受験料はさほど大きな割合を占めるわけではないものの、難関校や大学付属校なら1回3万円の学校が多い。栄東の約3億円は別格としても、人気校の受験料収入は数千万円にはなる。
2023年の首都圏中学入試で、良くも悪くも一番話題となったのは芝国際だった。その実態については以前の記事を参照していただきたい。慶應義塾大学三田キャンパスにも近い好立地に加えて、「グローバルな学び」「STEAM」のような世界標準の学びという受験生の保護者に刺さる教育内容を並べ、同じ校舎内に入るインターナショナルスクールとの連携も掲げている。さらに、伝統女子校からの共学化・新校舎・新制服と、人気回復のため私学で取られる三つの手段も同時に行っている。
加えて、その入試の仕組みにも、私立中高一貫校における“勝利の方程式”の要素がすべて投入された。東京都市大学付属で採用されているII類(難関国公立大)とI類(難関私立大)というコース分けをボリュームゾーンの本科に適用、国際教育に関心を持つ保護者に対する最大のアピールポイントとなる国際生コースもADVANCEDとCOREというクラス分けを行うことで、多種多様な入試を実施する下地となった。
初めての入試にもかかわらず受験者数合計が2791人を数えた要因の一つに、2万5000円の受験料を支払えば、何回でも追加料金なしで受験可能という“受け放題“プランの採用が挙げられるだろう。これも東京都市大付属で実施されていたものを採用したわけだが、同様の仕組みを採用している学校は、中位校を中心として80校ほどに達する。
図1と図2には、こうした学校について、23年の受験者数合計でランキングしてある。東京からのお試し受験生も多い埼玉の学校が上位に顔を覗かせている。また、図1は共学校と男子校のみだが、図2になると女子校が多く出てくる点も興味深い。