中2生が仲間と作り上げた手書きの入試問題。このまま使えそうな水準の内容に教員もびっくり!
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望月伸一郎(もちづき・しんいちろう)
栄光学園中学高等学校校長

1959年、東京・台東区生まれ。生後すぐ、母親と同じカトリックの洗礼を受ける。小中高を地元の公立校で過ごし、上智大学法学部を卒業後、社会人経験を経て、社会科教諭として栄光学園に。剣道部を創設し、最初の顧問となる。2009年教務部長、15年より同校第6代目校長に。創立70周年を機に、校舎も建て替えた。中学生から続けているチェロ演奏で、栄光フィルに参加することも。

 

オリジナリティが光る栄光の校風

戦後間もない横須賀の旧帝国海軍工廠敷地内(現・海上自衛艦隊艦隊司令部)で産声を上げ、2022年に創立75周年を迎えた栄光学園。設立母体は、対抗宗教改革で1534年に生まれ、1540年にローマ教皇に公認された、フランシスコ・ザビエルやルイス・フルロイスらが来日したイエズス会である。学校法人上智学院の下、上智大学のほか、中高一貫校として、男子校の六甲学院(兵庫)と広島学院、共学化した上智福岡(旧・泰星)がある。

望月  先日、ある中2の生徒が数学科教員に無言で冊子を手渡しました。ふと見ると、表紙には「2022年度栄光学園中学校入試問題算数」と書いてあります。その先生は一瞬、「どこかから漏れたのか」と驚きました。でもよく見ると、活字っぽく書いてはあるものの、手書きで作成したものでした(笑)。

――全部手書きですか。すごいですね。

望月 問題は、全部自分たちで考えたオリジナルで、クラスの友だちと相談し、難易度も調整したそうです。数学科の教員からみても、掛け値なしでそのまま入試で使えるようなレベルの良問だそうです。感動した教員がSNSに上げたところ反響があり、朝日新聞(2022年2月1日神奈川県版)でも取り上げられました。

 完成までどれだけ時間がかかったのか分かりませんが、宿題でもなく成績に反映されるわけでもないのに、ちょっとしたいたずら心で先生をびっくりさせてみようとみんなで楽しんでやる、というところが栄光生らしいと思いました。栄光学園の授業には、学んだり考えたりすることを楽しんで行えるような教員の工夫があり、これもその一つの結果だと思います。

――私の知り合いの卒業生に、以前、本校の志望動機を聞いたことがあります。彼が言うには、「イエズス会が世界史をどう教えるのか、関心があった」からだそうです(笑)。

望月 ずいぶん早熟な小学生ですね(笑)。初代校長のグスタフ・フォス神父は、アメリカの大学で学位をとったドイツ人の歴史学者でした。上智大で教えるため来日されたのですが、終戦直後、軍港だった横須賀を平和の基地とするために米軍がイエズス会に学校設立を依頼し、フォス神父が長上から指示を受け、本校を創立して校長に就きました。

 さまざまな国籍のイエズス会士が教員として教えていました。英語だけではなく、ほとんど全教科の教員にたくさんの外国人神父がいました。学習に関して生徒に求めるレベルはとても高いですが、教え方はすごく工夫されていて個性的でした。

 神父がほとんどいなくなったいまでも、考えること学ぶことの楽しさを共有すること、各教科の教員がとても工夫しながら教えること、そしてひとりひとりの生徒を大切にするといったイエズス会の神父たちが築いた栄光学園の教育文化は、見事に継承されていると思います。

――兄弟校には六甲学院もありますね。

望月  六甲学院は本校より10年前に開校しているので、戦中の厳しい時期を経ています。本校設立の10年後には、同じイエズス会の学校として、広島学院が開校されました。

学園の核である聖堂。礼拝は希望者のみだが、年に数回、生徒が集まる機会を設けている。階下には図書館がある