取材の際、その先輩は「沈黙は金」をうまく使い、相手が自ら話さなければ場が持たないと思わせるように仕向けていたそうです。具体的には、インタビュー中に少しだけ話を止めて、相手がその空白を埋めようとする瞬間を狙っていました。

 例えば、質問を投げかけたあと、しばらく沈黙を保ちます。すると、相手が答えることに焦りを感じ、結果として普段は話さないような深い部分や本音を語り出すことがありました。待つことによって、相手は無理に答えるのではなく、自然と心の内を話すようになったのです。

 沈黙を巧みに利用することで、先輩記者は相手にプレッシャーを与えることなく、貴重な情報を引き出していました。沈黙は、決して悪いものではないのです。

たった3つのポイントで
沈黙を活かすことができる

(1)沈黙が訪れたとき、「次の質問をしなくては」「何か話題を提供しなくては」と焦ってしまいがち。特に、私はこのタイプでした。しかし、相手が言葉を探しているときに急かしてしまうと、せっかくの深い話が聞ける機会を逃してしまいかねません。

 例えば、相手が考え込んだとき、すぐに次の質問を投げかけるのではなく、少し待ってみます。すると相手は「実は……」と、自分の言葉でじっくりと話し始めることもあります。沈黙を怖がらずに待つことも試してみましょう。相手がより率直な意見を話してくれたらラッキーですから。

(2)沈黙しているときに、相手の表情や態度をじっくり観察すると、その人の気持ちをより深く理解できる場合があります。

 例えば、相手が少し困ったような表情をしているなら、少し待ったあとで「何か気になることがありますか?」と優しく問いかけることで、より話しやすい雰囲気を作り出します。

 また、相手がうつむいたり、考え込んでいる様子なら、急かさずに「今、少し考えを整理していましたか?」と声をかけるのも、相手に安心感を与えます。

(3)沈黙を受け入れることは大切です。しかし、長く続きすぎると相手が話しづらくなってしまう場合もあります。そこで、適度なタイミングで話を促すことが必要になってきます。

 例えば、相手がしばらく沈黙したままの場合、「答えづらい質問でしたか?」といった前置きをしつつ、「何か考えがまとまりましたか?」と声をかけるのも手です。