「沈黙するチーム」のリーダーはどうすればいいのだろうか?
考えられる原因の一つは、「ミーティングで何を言っても大丈夫」という雰囲気に欠けるというものだ。このような状況では、チームの一体感はなくなり、コミュニケーションは停滞し、新しいアイデアや学びが生まれにくく、成果も生み出せなくなってしまう。
そこで参考にしたいのが、世界中で行われた経営学、心理学、経済学等の研究成果をもとに、グロービス経営大学院の教授陣が協力して書いたチーム・ウェルビーイングの教科書。「チームリーダーにできるちょっとしたのコツ」をまとめた一冊『職場を上手にモチベートする科学的方法――無理なくやる気を引き出せる26のスキル』。
今回は、同書から特別に抜粋・再編集し、チームの心理的安全性を高めるために、チームリーダーが予算や権限が少ないなかでも取り組める、効果的なアプローチとその具体的な実践方法について解説する。

また沈黙……誰も発言してくれず、停滞感が漂う
池上さんは医薬品メーカーの人事部でチームリーダーとして働いています。今はチームのミーティングで、人事方針の改善点について話し合っているところです。池上さんは、チームメンバーにこう投げかけます。
「どのような改善点があるでしょうか。積極的にみなさんの意見を教えてください」
メンバーはうつむき加減で黙ったまま、誰も発言しようとしません。居心地の悪い沈黙のなかで、池上さんは「また誰も発言してくれない」とがっかりした気分になります。
どうすればチームメンバーが積極的に発言してくれるようになるのでしょうか。
こうした気まずい沈黙はどんな組織にもあるでしょう。なぜメンバーは発言をためらってしまうのでしょうか。