「Comcast Must Die.(コムキャストは死ぬしかない)」とすごいタイトルのブログが立ち、顧客宅でいねむりする技術者のビデオがYouTubeで流れる。コムキャストへの不満はソーシャルウェブ上で爆発した。

 しかし、次に顧客を驚かしたのは、ミニブログのツイッターで顧客の問題をすぐに解決しようとするコムキャストの新チームだった。

 この連載は、新たな企業モデルの鍵としてエモーション×コミュニケーションについて考えていく。第5と第6回は感動や興奮というポジティブなエモーションの創造についてメーカー2社の事例を中心に記した。第7と第8回はコミュニケーションについて、特にソーシャルウェブの力を中心に議論する。今回は、不満などネガティブなエモーションと顧客コミュニケーションの例として米国コムキャストをとりあげたい。

技術者は顧客宅で居眠り
顧客サポートはなしのつぶて

 コムキャストは米国最大のケーブルテレビ会社だ。買収・合併を繰り返して、圧倒的な市場シェアを持つにいたった巨大企業である。しかし、その寡占的なポジションゆえか顧客サービスは問題視されてきた。 

 American Consumer Satisfaction Index (ACSI)によると、ケーブル/衛星テレビは業界別でみるといつも下位だが、中でもコムキャストはひどい。2008年1-3月の調査では、コムキャストは8社中最下位タイ、しかも史上最低点の54(業界平均64)を記録した。

 昨年12月にコムキャストは、2007年の利用者増を見込みの650万から600万に下方修正し一年前の4割以上低い株価となった。顧客満足度の低迷は業績にひびいているのだ。

 ハーバードビジネスレビューの論文「Beating the Market with Customer Satisfaction」 Christopher W. Hart, March 2007, は、ACSIでトップの点数をとった企業ばかりに投資するファンドが、市場を常に上回るリターンをあげていることを指摘している。顧客満足度は最終的に株価にも映し出されるのだ。

 買収合併を重ねてその統合で苦労しているという面もあるかもしれないが、ソーシャルウェブでの顧客の声からは、とても言い訳などできはしない深刻な状態がみてとれる。

■顧客宅でいねむりする技術者

 ブライアン・フィンケルスタインは、モデムの不具合のため、コムキャストの技術者に自宅に来てもらった。技術者は問題を特定し、モデムを取り替えることになった。しかしながら、技術者は困ってしまい、コムキャストの技術サポートに助けを求めて電話をした。そして、しばらく待たされたあげく、電話を耳にしたまま、そこにあったソファでこともあろうか居眠りしてしまったのである。

 フィンケルスタイン氏は58秒のビデオをYouTubeにアップロードし、なんと100万回以上も視聴され、この話題は皆が知ることになった。