
川崎 健一郎
働き方改革を生産性向上につなげるためには、マネジメントも変わらなければならない。前回はその改革の方向性として、社員の行動をリスクではなく、信頼という視点で捉えるマネジメントシステムの構築の必要性について説いた。本連載の最終回となる今回は、その具体的な形を明らかにし、構築に至る方策と人財サービス会社の役割について考えていく。

裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナル制度の導入など、働き方改革をめぐる議論は、今や国家的課題としての高まりを見せている。しかし、その現場に目を向ければ、依然として労働時間の短縮という「各論」のレベルで語られているのが現実だ。働き方改革を、社会的責任を越えて生産性の問題として捉え直すと、企業が取り組むべき課題として、働き方改革の本来の姿が見えてくる。

地方の小さな製造業の女性活用が話題を呼んでいる。創業78年。ステンレスねじ業界において国内トップの生産量を誇る静岡市の興津螺旋では、2012年、それまで男性しかいなかったねじの製造現場に初めて女性社員が配属された。「ねじガール」と呼ばれるようになった女性社員はその後着々と増え続け、現在では10人を数える。「私もねじを作ってみたい」という女性社員の一声から始まった試みは、同社の風土や経営の在り方にも影響を及ぼすようになっている。「ねじガール」の活躍は、老舗中小企業の何を、どのように変えたのか。同社の代表取締役社長の柿澤宏一氏に話を聞いた。

多様な働き方を受容し、働き手の量と質を確保する――。生産年齢人口が減り続けるなかで、多くの企業が推進する働き方改革の動機だが、そこには長期的な労働力確保のためのコストという見方が横たわり、事業の成長が多少犠牲になってもやむを得ないと捉える向きもある。これとは一見、逆方向ともいえる顧客視点の働き方改革を進めているのが伊藤忠商事だ。フレックス制の廃止や若手社員の寮の整備など、過去の働き方に戻るような施策を次々に導入している同社が目指す働き方改革の狙いとは何か。改革を先頭に立って進めている同社人事・総務部企画統括室長の西川大輔氏に話を聞いた。

「働き方改革」を支援する立場として、現場の担当者の方にお話をうかがうと、意外と誰にも喜ばれていないという現実に出くわす。総論としてはどんな人にもメリットがあっても、各論としては犠牲となる人が生じる。こうした状況のまま改革ブームが進んでいいものか。そんな問題意識で開催した「現場視点で考える働き方改革セミナー」だったが、ご登壇者からも、聴衆の方々からも想像以上に改革のリアルを求める空気が伝わってきた。

長寿命化がもたらす働き方や生き方の変化を『ワーク・シフト』『ライフ・シフト』の2冊の著作で鮮やかに描き出し、私たちが今すぐ取り組むべきことを多彩な観点から示唆したリンダ・グラットン氏。しかし、個人が会社に依存せずにキャリアデザインを描くことは、組織やネットワークが不要になることを意味するわけではない。新時代の組織はどうあるべきか、マネジメントの役割はどう変わるか、そして私たち一人一人は何を選択すべきなのだろうか。

平均寿命が飛躍的に延伸する将来、私たちはどのような人生を送るべきか。この新しく生まれた人類の命題に、大きなヒントを示した一冊『ライフ・シフト』が日本でも好評を博している。これから個人のキャリアプランはどのように描くべきか、女性や高齢者、障がい者など多様な働き手を社会はいかに受容すべきかなど、働き方にまつわる問いは尽きない。今回、アデコの働き方改革プロジェクトのスタッフが、著者のリンダ・グラットン氏にインタビューするため、英国のロンドン・ビジネススクールを訪ねた。

世界に先駆けて本格的な人口減少に入った日本において、「働き方」も変化を余儀なくされている領域の一つ。だが、企業の雇用制度やビジネスモデルの変化は鈍い。豊かな働き方を実現するためにはどうしたらいいのか。世界最大の人材サービス企業アデコグループの日本法人トップ、川崎健一郎が「新しい働き方」をビジネスの力で実現する方法を探る。
