蟹瀬誠一
逮捕され刑務所に送られるのか。それともお得意のウソとハッタリでまたも法の網を潜り抜けるのか。司法当局によるドナルド・トランプ前米大統領に対する捜査が核心に迫りつつある。

有罪か、無罪か。ドナルド・トランプ前米大統領の史上初2回目の弾劾裁判が、過激なトランプ支持者の襲撃を受けて間もないワシントンの連邦議会議事堂で始まった。

「要人警護のプロとして政治的に偏らない姿勢でこの任務を遂行してもらいたい」。目前に迫ったバイデン次期大統領の就任式を前にアメリカ合衆国シークレットサービス(USSS)局長のジェームス・マレーは局員にそんなメモを送った。政治姿勢に言及するなど異例のことである。理由は1月6日の連邦議会議事堂乱入事件で浮き彫りとなったトランプ共和党と民主党の激しい対立だ。

トランプ大統領を「罷免」せよという声が、にわかにホワイトハウス内でささやかれるようになった。昨年の弾劾のチャンスを逃しておいて今更と言えば今更なのだが、それほどトランプの言動が常軌を逸してきており、任期が切れる今月20日正午まで待てないほど危機感が高まっているということだろう。

中年をとうに過ぎて白髭と太鼓腹が目立つ男は、妻と共に首都テヘランから東に70キロほど離れたアブサードに向かって快適に車を走らせていた。新型コロナウイルスの影響で普段の大渋滞がなかったからだ。

11月3日に迫った米大統領選挙。全米支持率で劣勢のトランプ氏は、最終盤での巻き返しを狙い、各地で精力的に集会を開いている。だが、トランプ氏が敗北したら、一体何がおきるのだろうか。

アメリカ中西部ミシガン州の田舎町ミュニスの森の一角で、数カ月前から毎週日曜夕刻になると何百発もの銃声と爆発音が響いていた。不審に思った住民もいたが、射撃の練習かと思って誰も警察には通報はしなかったという。

アメリカ大統領選には「オクトーバー(10月)サプライズ」がつきものだが、今年は半ば予想できた“サプライズ”が起きた。トランプ大統領の新型コロナ感染である。

11月3日の米大統領選挙がいよいよ終盤戦に入る中、トランプ大統領と民主党候補のバイデン前副大統領の両陣営による攻防が激しさを増している。米国をはじめとする海外の政治情勢に詳しいジャーナリストの蟹瀬誠一氏が、トランプ再選の行方について解説する。
