“日経平均株価を中心に、大型株は想定以上に強い。一方、新興市場を中心に小型株は呆れるほど弱い。”これが今の相場に対する率直な感想です。
大型株が強い背景は、米株が強く、ドルが強いからです。また、日本株については、朝鮮半島の地政学リスクの低下もポジティブに作用しているのでしょう。
米株が強い主因のひとつは原油先物高です。これがエクソンモービル(XOM)、シェブロン(CVX)などのエネルギー関連株高に直結しています。また、原油先物高は世界的な物価上昇要因です。このため、将来のインフレ期待が高まっており、米長期金利上昇に寄与しています。これが日米金利差拡大の思惑を呼び、外国為替市場でのドル高要因となっています。
中東情勢の不安定化による原油先物高は
当分の間は継続する見通し
なお、原油先物高の背景は、米国のイラン核合意の破棄により、イランの原油輸出が大きく減少するとの見方が強まったためです。また、世界最大の石油輸出国サウジアラビアが進める国営石油会社サウジアラムコの上場が、早ければ2019年4月とみられる状況下、サウジアラビアはさらなる原油高を望んでいると観測されているようです。ちなみに、サウジアラビア財政が均衡する原油価格は、1バレル=88ドルだそうです。
さらに、米トランプ政権がイラン核合意からの離脱を決めたことで、イランとイスラエルとの軍事衝突リスクが意識され、中東情勢が不安定化しています。こうなると、そう簡単には、原油先物相場は崩れないでしょう。
思い返せば、WTI原油先物価格が2016年1月20日に1バレル=26ドル19セントまで下落するなど、原油先物相場が崩れた際、日本株も急落に見舞われました。2016年の年初、1万8818.58円で始まった日経平均株価は2月には一時1万4865.77円まで下落したのです。その背景には、原油安によって財政が悪化した産油国の政府系ファンドが保有株式を売却する、との懸念が強まったことがあります。
当時の原油先物安は、サウジアラビアとイランの関係悪化によって、石油輸出国機構(OPEC)での減産合意の公算が小さくなったことに加え、サウジアラビアが価格よりもシェア優先で生産を続けたため、供給超過が継続するとみられていたからです。しかしながら、現在は産油国が減産に協力しており、あの時のように需給バランスが崩れることはありません。
良好な外部環境により、日経平均株価が
2万3000円を超えてくる可能性は高まった
テクニカル的に、日経平均株価は5月11日の上昇で、2月5日と6日とで空けた窓(2万2277.45円〜2万2659.43円)を完全に埋めました。また、10日時点で、25日移動平均線(10日現在2万2033.99円)と75日移動平均線(同2万2031.95円)とがゴールデン・クロスしました。
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こうなると、今後は、2月2日~5日の窓(2万2967.69円〜2万3122.45円)埋めが意識される見通しです。
前回当コラムで、「余程の好材料が出ない限り、一気に2万3000円を超えていくことは難しい」しましたが、「外部環境が想定以上に良好なため、2万3000円を超えてくる可能性が高まった」と、日経平均株価の想定を上方修正します。
大型株が上がる一方、
小型株が上がらない状況はしばらく続く
ただし、足元の新興2市場の売買代金の増加は確認できません。決算発表がピークアウトしても、ボリュームの増加がみられていないため、引き続き、多くの個人投資家にとって、「日経平均株価だけが強くて、自分の持ち株は全く上がらない、むしろ、下がる(T_T)」という状況が継続していると観測されます。
よって、個人投資家は、小型株を諦めて主力の大型株中心の売買に戦略変更するか、アクティブ運用を止めてパッシブ運用メインにするべきでしょう。具体的には、時価総額5000億円以上の銘柄や、先物・オプション、指数連動のETFなどだけを運用対象とすることをお勧めします。
個別では、時価総額5000億円以上の銘柄で、2018年度の業績が増収増益予想で、できれば過去最高益を更新する見通しのものや、2017年度から2018年度にかけて業績が「V字回復」する見通しのものや、連続増配が見込めるもの、また、自社株買いに積極的なものが魅力的です。
テクニカル的には、株価が25日移動平均線を上回っており、短期的な株式需給が良好であることが最低条件です。
先物・オプションは「ゼロサム・ゲーム」
初級者は手を出すべからず
先物・オプションに関しては、腕に覚えがある人だけが行うべきです。特に、頭では損切りの大切さはわかってはいるけど、なかなか実行できない人は、絶対に手を出すべきではないと思います。
決済期限がなく「プラスサム」があり得る現物株と違い、決済期限のある先物・オプションは「ゼロサム・ゲーム」であるため、完全に「ギャンブル」です。とりわけ、先物・オプションのショート(売り)は「利益限定・損失無限」のポジションであり、且つ、レバレッジが効いているため、しまったと思っても損切りできずに我慢したら、簡単に死ねます。だからこそ、現物株だけの運用時よりも、10倍いや100倍くらいリスク管理を厳密にしないとなりません。
現在のように日経VIが「20以下」のときの
日経平均先物・オプションにおけるオススメ戦略は?
それでは、私の考える日経平均先物・オプションの具体的な戦略を紹介しましょう。
主に使う指標は日経平均ボラティリティー・インデックス(日経VI)です。これは、投資家が日経平均株価の将来の変動をどのように想定しているかを表した指数であり、値が高ければ高いほど、投資家が今後、相場が大きく変動すると見込んでいることを意味します。
日経平均ボラティリティー・インデックスの基準値は20です。20未満なら「日経平均株価は上昇局面、または、横ばい」、20以上なら「日経平均株価は下落局面、または(超稀ですが急騰局面)と、私は判断します。
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ちなみに、5月15日の日経平均ボラティリティー・インデックスは14.56です。よって、現在は「日経平均株価は上昇局面、または、横ばい」と判断します。
この局面で有効な戦略は、上昇トレンド中に一時的に下がったところで買う「先物の押し目買い」、相場が急騰したところで売る「先物の噴き値売り」、「コール・オプションとプット・オプションの同時売り(ショート・ストラドル・ショート・ストラングル)」、「噴き値でのコール売り」、「押し目でのプット売り」などです。
つまり、基本は逆張り、または、レンジの収益化です。
なお、20未満時での、ショート・ストラドル・ショート・ストラングルは非常に高い確率で儲かります。
ただし、ボラティリティー・インデックスの上昇は、天災ではありませんが、忘れた頃に突然やってきます。仮に、10勝1敗でも、その1敗で10勝分の勝ち分を一発でふっとばすことが多々あります。このため、あなたが、ボラティリティー・インデックスの上昇の気配を感じたら、仮に20未満時でも、ショート・ストラドル・ショート・ストラングルのポジションは封印しましょう。
日経VIが「20以上」になったら
「順張り」や「トレンドの収益化」が基本戦略
逆に、日経平均ボラティリティー・インデックスが20以上になったら、「日経平均株価は下落局面、または(超稀ですが急騰局面)と判断できますので、有効な戦略は、「先物の順張り売り」、「コール・オプションとプット・オプションの同時買い(ロング・ストラドル・ロング・ストラングル)」、「プット・オプションの裸買い(ヘッジを行っていない単独の買い)」などです。
つまり、基本は順張り、または、トレンドの収益化です。
なお、20以上のときは、決してトレンドに向かう逆張りはしない方が身のためです。特に、プットのショートは上級者以外はやるべきではありません。トレンドが出ている時に、日経平均株価の変動が敵となる「ネガティブガンマ」戦略を採用して、想定以上の強いトレンドが出たら、あっという間に損失が膨らみ、簡単に死ねちゃうからです。
だから、20以上の時は、トレンドに乗ることを兎に角優先して、オプションに関しては相場の変動が利益につながる「ポジティブガンマ」を選択するべきです。
このように、日経平均ボラティリティー・インデックスを参考に、あなたなりの基本戦略を策定した上で、自分なりの利食い、損切りルールを決め、粛々とトレードすればよいでしょう。
ただし、繰り返しますが、先物・オプションはゼロサム・ゲームであり、ギャンブルです。躊躇なく損切りの出来ない投資家は決して触るべきではありません。
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