激動の8月相場が終わりました。日経平均株価の月足のローソク足は実体が1649.73円、下ヒゲが1176.18円の「長い下ヒゲ付き大陰線」(始値は3日の20540.21円、高値は11日の20946.93円、安値は26日の17714.30円、終値は31日の18890.48円)でした。
相場格言の「2日、3日新甫(しんぽ)は荒れる」というものがありますが、まさにそれが当てはまる乱高下となりました。
安心材料は「中国が中国発危機の
封じ込めに躍起になっている」こと
今回の混乱で、投資資金を大幅に減少させた人や、これまでコツコツ積み上げてきた利益をぶっ飛ばした人が相当数出ていると推察されます。また、逆に、個別株の空売り、先物ショート、プットオプション買いや、1万7000円台に突入したパニック局面での買いなどで、短期間で大幅な利益を獲得した投資家も相当数いるはずです。相場が混乱すると、様々なドラマが生まれたはずです。今回の急落を直接体験した方は、是非、この経験に学び、いつかまた来るであろう急落局面で、上手く立ち回り、短期間で収益を獲得してください。
なお、今回の急落は地震で例えるなら、「震度7」級です。このため、しばらくは、震度4や5程度の余震の発生は覚悟するべきです。
しかし、世界同時株安の震源地の中国では、8月26日に政策金利である銀行の貸し出しと預金の基準金利を0.25%ずつ引き下げ、9月6日には市中銀行から強制的に預かる資金の比率である預金準備率を0.5%下げます。また、8月28日の週には、中国人民銀行は、市場に計5000億元の大規模な資金供給を実施するなど、威信をかけた9月3日の抗日戦勝70周年式典を前に、あらゆる手段で「中国発の危機」封じ込めようと、躍起になっています。これは世界の株式市場にとって安心材料です。
米利上げの確率は
雇用統計次第だが五分五分
また、同じく日本株下落の一因だった米国株の下落も一服しています。
8月27日発表の4~6月期の米実質GDP改定値が前期比年率3.7%増と速報の2.3%増から大幅に上方修正され、市場予想の3.3%増を上回ったことで、市場のムードが一段と改善し、大幅な下落リスクが低下しました。
ただし、市場が注目する利上げについては、FRBは9月4日発表の8月の雇用統計も踏まえて最終判断する見通しです。なお、現時点では、9月16日~17日開催のFOMCでの利上げ実施の有無は、市場予想では五分五分のもようです。8月の雇用統計については、非農業部門の雇用者数が前月比で22万人前後の増加とみられており、回復の目安とされる20万人増を4カ月連続で上回る見込みです。仮に市場予想通りの着地なら、利上げ実施確度が高まることでしょう。
個人的には、利上げ見送りなら現状と変化なしですし、利上げ実施ならそれだけ、米国の経済が強いということですから、前向きに捉えてもよいのではないかと考えています。
それでも、経済大国の米国が、08年12月から続けている事実上のゼロ金利政策をやめて、利上げするのです。正直、利上げが実施された場合の市場へのインパクト、その後の相場の動きは予測できません(笑)。まあ、投資家からしてみたら、FOMCの結果が出てから売るか、買うかの判断をすればよいでしょう。
需給が改善したので日経平均株価が
2万円付近まであっさり戻る可能性も低くない
今後の日経平均株価の見通しですが、8月21日と24日とで空けた窓(1万9154.65円~1万9435.83円)、20日と21日とで空けた窓(1万9737.54円~2万33.29円)埋めや、25日移動平均線(8月31日現在2万1.63円)付近がまずは戻りメドとして意識されるでしょう。
1万7714.30円までの急落で、相当量の投げが出たことは間違いありません。皮肉なことに、その結果、需給は劇的に改善しました。このため、2万円付近までは、案外とあっさり戻る可能性は低くはないと考えます。
ただし、本格的な戻りに入るには、200日移動平均線(8月31日現在1万9053.10円)を超えてこないとだめですね。これを超えてくるようなら、下値不安が乏しくなり、上昇しやすくなると考えます。一方、下値サポートは5日移動平均線(8月31日現在1万8556.95円)です。同線を割り込むようなら、大きめの余震が断続的に発生するリスクが高まるとみています。
日本株が下がれば
GPIFの株の資産構成比率が下がる
ところで、8月26日の寄り付き前の主要銘柄の気配は大量の買いが入り、メジャーSQの時のような雰囲気でした。この日、市場では、株価下落で株式の比率が下がったことで、買い余力の増したGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や、公務員らが加入する3つの共済年金などのいわゆる「4匹のクジラ」によるTOPIX型のインデックス買いが、前場の寄り付きから入ったとの観測が囁かれていました。
GPIFが8月27日発表した2015年4~6月期の運用実績によれば、6月末時点の積立金全体の資産構成は、国内株が23.39%と、3月末時点の22.0%から上昇し、目安の中心値とする25%には達しなかったものの、01年度以降の最高を記録しています。しかし、大和証券の予測によれば、「8/26時点で国内株比率は22.2%程度まで低下していると推測される」「仮に、今年度末までに国内株比率を25%まで引き上げるとすれば、最大3.7兆円程度の日本株買いが期待されよう」としています。
また、GPIFは公務員らが加入する3つの共済年金と、10月から資産構成の目標を一元化することが決まっていますが、3共済の国内株式組み入れが出遅れているようです。そして、野村證券も「日経平均株価が2万円台を維持していた時期は、GPIFと公務員らが加入する3つの共済年金を合わせた日本株の買い余地は約1兆9000億円あった。その後の株安に伴い、全体に占める日本株の比率も低下。25日の取引終了時点では、日本株の買い余地は5兆円にまで膨らんだ」と試算しているそうです。
このように相場が下がれば下がるほど、事前に決められている日本株の保有率25%から保有率が下がっていくため、4匹のクジラは保有率25%を目指して日本株を買わなければいけません。つまり、日本株の買い余力が増すため、これは一応、買い方にとっての安心材料ですね。
よって、これから株を買うのなら、クジラが下値を買い支えてくれるであろう主力株にしましょう。一方、個人の売買が主体の小型株や、材料株はクジラの買いが期待薄のため、見送りが妥当ですね。
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