年初からの世界的な株安の主因だった、原油先物価格の下落が一服し、上海株式相場も足元では落ち着いた動きになっています。
原油先物価格に関しては、サウジアラビアとロシアなど主要4産油国が16日に条件付きながらも増産凍結で合意したことで、市場心理が落ち着きました。一方、上海株に関しては、中国の証券当局トップの肖鋼・証券監督管理委員会主席が、市場の混乱の責任を取らされる形で、事実上更迭されたことに加え、3月初旬開催の全国人民代表大会の接近で、証券市場や国有企業の改革期待が強まっています。こうなると、世界的に株式市場は下がり難い状況になります。
一方、国内では、12日時点の裁定買い残(期近・期先合計)は、前週比2026億円減の1兆9848億円と2兆円の大台を割り込み、昨年9月4日時点の1兆8476億円以来、5カ月ぶりの低い水準となりました。また、12日時点の信用買い残は2兆6797億円と、2014年11月以来、約1年3カ月ぶりの低水準になりました。前週末比の減少幅は2532億円と、5カ月半ぶりの大きさでした。
日経平均株価が昨年来安値の1万4865.77円を付けた12日の週は多くの信用個人にとって、悪夢のような1週間だったことでしょう。
日経平均株価はこの週、終値ベースで1866.98円(11.10%)急落しました。外国為替市場で1ドル=110円台まで急速な円高が進み、ヘッジファンド等が「円買い/ドル売り・日経平均株価先物売り」を加速させた結果、日経平均株価先物が理論価格より割安になり、裁定解消売りが誘発され、日経平均株価現物指数の下げ幅が拡大しました。
追証絡みの投げが12日でピークに達して反発に転じた
また、日経平均株価の急落を受け、換金売り圧力が強まる一方で、多くの投資家が買いを見送りました。その結果、恐怖にかられた買い方は、薄い買い板に、売りを乱暴にぶつけました。とりわけ、小型株は、そのような値段構わずの投げ売りの影響で、真空地帯をまさに「つるべ落とし」のような状態で急落しました。
この結果、信用個人のポジションは、代用有価証券の値下がりによる担保力の低下に加え、買い建玉の評価損の膨張という、「2重苦」で一気に追証発生に追い込まれました。実際、12日に関しては何人かの証券マンから、「8日時点で50%超あった維持率が、リアルタイムでは一気に10%台に低下した」との声を聞いています。また、「切っても切っても追いつかない」とも。
そして、強制決済を含め、信用買いの整理が一気に進みました。また、皮肉なことに、そのような追証絡みの投げが12日でピークアウトしたことで、日経平均株価は、目先の底入れを果たしました。同時に、裁定買い残がここまで減少したことで、当面は、裁定解消売りによる日経平均株価現物指数の下落エネルギーは大幅に低下したとみてよいでしょう。少なくとも、仮需(裁定売買・信用売買)の残高をみる限り、12日の週のような急落は当分起らないとみています。
ただし、現時点では、中長期的な先高観が強いわけではないため、腰を据えた買いがガンガン入る状況ではありません。そのような状況で、2月第2週(8~12日)の委託取引の売買代金に占める外国人投資家のシェアは75.3%と最高水準でした。ヘッジファンドなど短期マネーを中心とした外国人投資家の売買がほとんどとみられ、それが日経平均株価の振れを増幅させています。
日経レバッレジ型ETFが相場に与えるインパクトは大きい
さらに、日経レバレッジ・インデックス連動型ETF(1570)を対象にした個人投資家による短期売買も活発です。
日経レバは、基準価格の騰落率を日経平均株価のその日の騰落率の2倍にするために、運用で保有する日経平均株価先物の持ち高を調整します。例えば、日経平均株価が2%上がった日には15時から15時15分にかけて日経平均株価先物を運用残高の4%分買います。また、資金流出入に対応して日経平均株価先物の持ち高を増減させます。
そして、この日経レバの口数の増加が止まりません。口数が増加し純資産総額が増えれば増えるほど、調整する際の先物の売買枚数が増加するため、相場への影響が大きくなります。
このような短期売買を繰り返す外国人投資家と、日経レバ絡みの取引が、日経平均株価の振幅を増幅させ続ける見通しです。そして、この傾向は、日経平均株価について、中長期的な先高観が強まり、腰を据えた買いがガンガン入る状況にならないと是正されないでしょう。
当面の注目ポイントは「日経平均の終値と25日移動平均線」
テクニカル的には、日経平均株価が終値ベースで、安定的に25日移動平均線を(22日現在1万6622.21円)を上回って推移してこないと、買い方は安心して相場を眺めていられないと思います。つまり、同線を下回っている間は、調整が続いていると認識しておくべきです。
しかしながら、同線を安定的に上回れば、まずは、先安観が大幅に弱まります。また、そうなると売り方が買い戻しを急ぐため、急落時の「売るから下がる、下がるから売る」という負の連鎖から、「買うから上がる、上がるから買う」という正の連鎖に入る可能性が高まります。だからこそ、当面の注目ポイントは、「日経平均株価が終値ベースで、安定的に25日移動平均線をを上回って推移できるか否か」です。
なお、あなたが今後も株式投資を続けるなら、12日の週のような「ナイアガラ」は当然は発生することでしょう。そのような時は、あの著名投資家のジョージ・ソロス氏の「まず生き残れ。儲けるのはそれからだ(Survive first, and make money afterwards.)」という名言を思い出すべきです。そして、思い出すだけでなく、実行するべきです。
昨年12月以降これまで、多くの投資家にとって難しい相場が続いています。また、現時点ではそれほど状況が好転しているわけではありません。しかし、いずれどこかで、儲け易い上昇相場が来るでしょう。それが来るまで、辛抱強く、生き残ってください。
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