最下層からの成り上がり投資術!

3月10日前後に暴落するという噂は本当か?当面は3つの要因(原油安、円高、中国懸念)が沈静化するまで投資資金を守ることが大事!

【第202回】 2016年3月1日公開(2022年3月29日更新)
藤井 英敏
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 G20財務相・中央銀行総裁会議は2月27日の声明で、年初以降の市場動揺に対し、政策を総動員する姿勢を示しましたが、具体策はなかったことで、市場への影響は「ノーインパクト」でした。

 この結果、週明けの日経平均株価は2月12日の週の1万4865.77円~1万7099.01円の長大陰線の中で、引き続き推移しています。

日経平均株価チャート(日足・6カ月)*チャート画像をクリックすると最新のチャートがご覧になれます。SBI証券HPより

 確かに、12日の1万4865.77円で1番底は付けた感じです。しかし、その後の反発力は鈍く、2月26日の1万6472.50円にしても、29日の1万6464.75円にしても、25日移動平均線にすら届きませんでした。今後も25日移動平均線を上回れない限り、調整色の強い相場が続く見通しです。

日経平均株価の調整が続いている要因は、

(1)円高が継続するムードが強い
(2)原油先物価格が急反発していない
(3)中国の資本流出に伴う人民元安・上海株安懸念が払拭されていない

などが挙げられます。

 先ほど述べたように、2月27日まで開催したG20財務相・中央銀行総裁会議は、市場の安定へ金融、財政、構造改革の3つの政策手段の総動員を表明したものの、具体的な政策合意はありませんでした。

 一方で、「通貨の競争的な切り下げの回避」も強調し、会議において日本への名指しでの批判があった可能性が一部で観測されています。こうなると、水準そのものを切り下げるような強烈な円安を誘導する為替介入や、円安方向に強烈に誘導するさらなる追加の金融緩和に日本が動きにくくなったとの認識が強まりました。

産油国の政府系ファンドが財政赤字穴埋めのため
2016年も約45兆円規模で保有株式を売却する可能性も

 原油先物価格に関しては、ベネズエラのデルピノ石油・鉱業相が2月25日、サウジアラビア、ロシア、カタールが、石油市場の安定に向け3月中旬の会合開催で合意したことを明らかにしたとの報道がありました。これはこれでポジティブな材料ですが、足元で強烈な原油先物価格の急反発は実現していません。

 なお、ソブリン・ウエルス・ファンド・インスティチュート(SWFI)によれば、政府系ファンドは2015年に2133億ドル(約23兆9000億円)の世界の上場株式を売却したと指摘したということです。そして、原油価格が1バレル30~40ドルで推移する場合、2016年中にさらに4043億ドル、日本円にして45兆円規模の株式残高圧縮の動きが出ると予測していると報じられています。

 だからこそ、当面の日本株を含む世界の株式市場は、原油先物価格の動向に大きく左右され続ける見通しです。

 原油先物価格が低迷したままだと、産油国の政府系ファンド(SWF)が株式を売り、財政赤字の穴埋めを図るとの思惑から、投資家がリスクオフになり、世界的に株式が売られ易くなるからです。そのケースでは、外国為替市場では、安全通貨の円が買われ、先進国の中で、特に日本株(日経平均株価)の下落率が高くなります。当然、逆に、原油先物価格が上昇すれば、先ほどの図式とは全く逆回転となり、先進国の中で日経平均株価は特に上がりやすくなります。

麻生大臣、菅官房長官の発言とは裏腹に
日本の政府が財政出動する期待感を株式市場は持っている

 そして、中国に関しては、G20が終わった直後の2月29日夜、中国人民銀行(中央銀行)は、3月1日から預金準備率を0.5%引き下げると発表しました。引き下げは2015年10月24日以来、約4カ月ぶりのことです。ちなみに、29日の上海総合指数は、上海外国為替市場で人民元安・米ドル高が進んだことが嫌気され、前週末比79.2309ポイント(2.86%)安の2687.9788ポイントと、昨年来安値を付けた1月28日以来、およそ1カ月ぶりの安値となっていました。

 ただし、3月5日開幕の全国人民代表大会(全人代)に向けた政策期待はあるため、目先は「チャイナ・ショック」は起こりにくいとは思います。なお、全人代では、過剰生産の解消などの構造改革に加え、財政赤字の拡大覚悟の景気刺激策の発表や 経済成長率目標は6.5~7%という幅を持たせることなどが予想されています。

 円高是正に対して、力技の為替介入が使いにくく、原油価格も産油国の生産調整の協議次第であり、そして、当然のことながら中国経済の問題は中国自身でしか解決できないことを考えると、現在、日本が能動的に動けるのは、財政出動のみということになります。実際、2月25日には一部で複数の与党関係者の話として、政府が、4月以降に5兆円規模の補正予算を組むことを検討していると、伝わっています。

 ただし、麻生太郎財務・金融相は2月26日、「今直ちに財政出動の話しをしなければいけないほど日本のファンダメンタルズは悪くない。新たに補正予算を考えるつもりはない」と語り、菅義偉官房長官も2月29日、審議中の2016年度予算案の成立直後に16年度補正予算案を編成する可能性について「現時点において、我が国の経済状況からは全く考えていない」と述べています。

 まあ、2016年度予算案を審議中に、閣僚が2016年度補正予算案を編成する可能性を指摘することはできないのが普通でしょう。このため、麻生大臣、菅官房長官の言葉を額面通り、受け取る必要はないでしょう。

 よって、現時点では2016年度補正予算案が編成される可能性は極めて高いと、市場は読むはずなので、この期待感が日本株を力強く下支えることになりそうです。

3月11日に先物・オプションのSQ前に
リーマン・ショック超えの金融危機が起こるというウワサも

 ところで、1日の米国のスーパーチューズデイ、4日の2月の米雇用統計発表などを経て、3月11日の金曜日に東日本大震災が起きたことなどのアノマリーやジンクスを根拠に、3月8~10日にリーマン・ショックを超える金融危機が起きるとの観測というか、ルーマー(噂)が市場の一部で根強く囁かれているようです。

 まあ、11日は先物・オプションのSQですから、その前のポジション調整で、日経平均株価が乱高下する可能性はあるでしょう。しかしながら、そこまでの危機が起こるとは、私は予想していません。

 それでも、年初から日本株は波乱の展開となっており、3月のSQは一応その終戦記念日となる可能性が残ります。このため、外部環境次第では、3月SQに向けた2番底形成シナリオは、排除できないとは考えておく必要はありますね。

 とにかく、原油安、円高、中国懸念が沈静化するまでは、投資行動は慎重に行うべきです。種銭を溶かさないことを最優先に、現在の混沌とした相場を乗り切ってください。

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