2月中旬以降、ある経済系サイトや一部夕刊紙で紹介されていた「3月10日暴落説」が、引き続き市場の一部で話題になっています。
そのシナリオによれば、“NYダウや日経平均株価は2月は1月末の相場(日経平均株価なら1万7000円に水準)まで戻し、3月8日~10日にかけてリーマンショックを超えるような暴落が発生し、5月24日~25日には、さらに大きな暴落が発生する可能性を指摘。また、既存の金融システムの本格調整過程で下落は2022年くらいまで続く。”とのことです。まさに、今日を含めて3日間が、一発目の暴落発生予想期間です。
ただし、当コラムの執筆時点(8日午前)では、そのような兆候は見当たりません。7日のNYダウは、原油先物相場が大幅に上昇したことが好感され、5日続伸し、前週末比67.18ドル高の1万7073.95ドルでした。WTI期近4月物は前週末比1.98ドル高の1バレル37.90ドルで、一時38.11ドルまで上昇しました。また、ロンドンの北海ブレント原油先物は昨年12月以来初の40ドル台でした。
主要産油国の生産調整会議へ期待と、米国で石油リグ稼働数が減少したことが好感されたことが、原油高の背景です。
今後の日本株が上昇するか、それとも下落するかのカギを握る指標についての個人的な優先順位は、
・1位 原油先物価格
・2位 円相場(特に対ドルレート)
・3位 中国経済と上海株
・4位 欧州金融システム(特に、ドイツ銀行を中心とした銀行株)
・5位 米国経済と米国の金利動向
です。
【1位:原油先物価格】
上がれば株式に対して強気、下がれば弱気でOK
このため、単純に先行きの相場を予想するなら、原油先物価格が上がれば強気、下がれば弱気でいいのではないかと思っています。これは、原油先物価格が上がれば、産油国からのリスクアセット売りが止まることで、他の多くの投資家がリスクオンになるからです。それが足元の世界の株式相場好調の主因だとみています。
逆に、原油先物価格が下がれば、産油国から実弾のリスクアセット売りが加速し、世界的な株安が発生し、これにヘッジファンド等の投機筋が株価指数先物売り等で相乗りし、パニック的な下落が発生する可能性が高まります。
【2位:円相場(特に対ドルレート)】
リパトリエーション一巡後に円安方向へ
2位の円相場に関しては、原油先物価格が堅調なら、安全資産だけれども低金利通貨の円をあえて買うニーズも高まらないでしょう。ただし、例年、輸出業など海外進出を行う3月決算の企業は、2月中旬~3月中旬にかけてリパトリエーション(海外に保有している資産を本国に引き揚げること)を行うため、足元ではドルの上値は重そうです。このリパトリが一巡し、原油先物価格が堅調に推移するようななら、3月下旬にかけて、円安余地が広がるとみています。そうなれば、日経平均株価の戻り余地も拡大する見通しです。
【3位:中国経済と上海株】
上海株の動向はそれほど日本株に影響はない
3位の中国経済と上海株については、中国政府は3月5日に開幕した全国人民代表大会で、2020年まで年平均6.5%以上の「中高速成長」を保つ目標を正式に表明しました。政府は、減税などで企業負担を軽くする一方で、設備過剰の解消や「ゾンビ企業」の淘汰を目指し、「供給サイドの改革」を断行する決意を表明しました。
ただし、この中国政府サイドの「大本営発表」を額面通りには、受け取れません。7日の上海総合指数は5日続伸し、2897.3395ポイントと、2月24日以来約2週間半ぶりの高値圏を回復したものの、心理的節目の3000ポイントを大きく下回る水準です。また、政策当局は、金融緩和と人民元買い介入を組み合わせて、緩やかな人民元安を促すとみられます。このため、この人民元の下落が止まるまでは、中国経済への懸念は燻り続ける見通しです。
なお、足元では、東京市場における上海株式市場への関心は一時に比べて、メチャクチャ落ちています。つまり、「上海株離れ」が顕著です。このため、その動向には注意を払っておく必要性は高いのですが、今は、あまり気にしなくてもよさそうですね。
【4位:欧州金融システム】
3月10日のECB理事会後に再び「ドラギ・ショック」もあり得る
4位の欧州金融システム(特に、ドイツ銀行を中心とした銀行株)については、2月中旬にかけて、盛り上がった悲観論が、今はまるでそんなことがなかったかのように沈静化しています。
しかし、10日にはECB(欧州中央銀行)理事会があります。2月のユーロ圏消費者物価上昇率が前年同月比マイナス0.2%となったことで、預金ファシリティ金利を現在のマイナス0.3%からさらに下げる可能性は一段と高まっています。量的緩和規模の拡大や、購入債券利回りの下限撤廃なども期待されています。
ですが、ECBが動くと、その動きが事前の市場予想の範囲内で、発表後、材料出尽くし、もしくは失望となり、今回も昨年12月3日のような「ドラギ・ショック」が起こる懸念は残ります。それをきっかけに、再び、市場が欧州問題への関心を高める可能性があるので、10日のECB理事会は要注意です。
【5位:米国経済と米国の金利動向】
3月15~16日のFOMCで利上げ観測が高まると市場は動揺する
そして、5位の米国経済と米国の金利動向については、4日発表の2月の米雇用統計は、利上げを後押しする強いものでもなく、かといって、米国経済鈍化を心配させるほど弱いものでもないという意味で、ちょうどよい内容でした。
ちなみに、米連邦準備理事会(FRB)は中国の景気減速などを懸念して、追加利上げには慎重スタンスのようです。
実際、イエレン議長の側近の一人である、NY連銀のダドリー総裁は1日、「新興国の低迷は、利上げを巡る判断の材料となるだろう」と、中国など海外経済の下振れリスクを強調しています。ただし、万が一、15~16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ観測が高まるような情勢になったら、その時は、市場は動揺するでしょう。
日経平均株価が日々の終値で
25日移動平均線を割り込むか否かに注目
政治の世界は一寸先は闇といいますが、株式投資の世界も一寸先は闇です。今、暴落の兆候が見当たらなくても、投資家はあらゆる可能性を考慮して市場に臨まないとなりません。
もちろん、「ブラック・スワン」や「テールリスク」ばかり考えていたら、株式投資なんてできません。ある程度リスクを取らない限り、リターンもありません。当コラムでは、基本的には、「利益限定・損失無限」の損益曲線のショート(売り)戦略は避け、「利益無限・損失限定」のロング(買い)戦略で、成り上がることを推奨しています。そうなると、安心して、ロングでスイングできる時はそうするけど、安心できないときはスイングせず、デイトレに徹するか、休むも相場で売買を見送るか、ということになります。
日経平均株価を親亀、個別銘柄を子亀と例えるなら、多くのと場合、「親亀こけたら皆こける」のです。つまり、日経平均株価が安定して上昇すると考える時だけ、安心してロングでスイングできるのです。
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