100円ショップのキャンドゥが、この不況期に強気の出店計画をぶち上げた。直近2年の出店合計数76店を上回る、103店を出店するという。

  注力するのは他社が退店したテナントへの居抜き出店。優良物件でも、この不況に打撃を受け、空きが増えると睨み、一気に拡大路線に舵を切る。

 「新店にテナントで入ると新店建設の協力金を何千万円も払わねばならない。分割で返してもらえるが、全額返金まで退店できない」と武藤真朗取締役は新店への出店リスクを語る。また、居抜きなら一から店舗を作る必要がなくコスト削減メリットもある。

 不況期の低価格志向と100円ショップブームが相まって、2000年代前半に急成長を遂げたキャンドゥ。

  しかし、08年11月期決算は減収減益。主な原因は、原材料価格の高騰で仕入れ原価が跳ね上がり、売れ筋商品の値上げに踏み切らざるをえなかったことだ。「なかには約10分の1まで出荷数が減ったものもある」(武藤取締役)。

 店舗オペレーションのほころびも顕著に表れた。キャンドゥでは、POSシステム導入店舗は全店舗の約22%足らず。約3万5000アイテムのなかの売れ筋把握は難しく、発注精度が落ち込んだ。

 しかし今期は原材料価格の下落と円高の追い風があり、値上げした商品の値段を元に戻すことができる。そこに不況による出店物件確保のチャンスと、消費者の生活防衛意識が後押し。POSシステム全店導入への投資も増額し、反転攻勢を目論む。

  ただ、競合他社にもこの不況は好機。セリアは今期すでに85店を出店、来期も70店強を出店する考えだ。目論見どおり再び成長軌道に乗せられるか。過当競争で淘汰・再編の道を歩むか。経営力がこれまで以上に問われる。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  新井美江子)