「最後までやり通す」性格が決定的要因だった

 やがて、生徒たちが大学課程を修了すると、つぎの3つの基準に該当する、成功の客観的な測定値が集められた。

「学業において優秀な成績を収めたか」

「若手としてリーダーシップを発揮したか」

「科学、テクノロジー、芸術、スポーツ、文章力、スピーチ、起業家的発想、社会奉仕などにおいて顕著な成果を収めたか」

 ある意味で、「性格的特徴研究プロジェクト」は競馬のレースに似ていた。研究開始時に数値評価が行われた100以上もの項目のうちどれかが、その後の人生の成功を左右する最大の要因――ダークホースにちがいないのだ。

 ただし、最終データが収集される数年前に書かれた初回の報告書を読めば、ウィリンガムがこの問題に関して、まったく先入観にとらわれていなかったことは明らかだ。各要素について、項目に加えた論理的根拠や測定方法なども含め、系統的な説明を行っている。

 しかし、ついに5年分のデータがそろったとき、ウィリンガムは自分の結論に対し、明確な自信を持った。一頭の駿馬が大差で圧勝したのだ。

 それは、「最後までやり通す」という特徴だった。

 ウィリンガムの研究チームは、「最後までやり通す」という性格的特徴について、つぎの方法で数値評価を行った。

「“最後までやり通す”という項目については、高校のときに何らかの活動にしっかりと継続的に取り組んだか、それともさまざまな活動に気ままに手を出したかについて、具体的な根拠にもとづいて数値評価を実施した」

 この項目でトップの数値評価を獲得した生徒たちは、高校でふたつの課外活動に参加し、両方とも数年間継続したうえに、どちらも顕著に進歩した(たとえば、「学校新聞の編集長になった」「バレーボールでMVPに選ばれた」「美術作品で受賞を果たした」など)。

 ウィリンガムが報告書で例に挙げた生徒は、「学校新聞の編集委員を3年間務めたのち、編集長となったうえ、陸上部にも3年間在籍して、重要な大会で優勝を飾った」。

 それとは対照的に、複数年にわたって続けた活動がひとつもない生徒たちは、「最後までやり通す」項目で最低評価が付けられた。なかには高校時代に参加した活動がゼロという生徒も数名はいたが、大部分の生徒は、ひとつのクラブやチームで1年ほど活動しただけで、翌年はまったく別のことを始めるといったことを繰り返していた。