上司との付き合い方に頭を悩ませているビジネスパーソンが大勢いるのは世の常だが、最近は「女性上司との付き合い方がわからない」という意見も聞くようになった。
政府では、「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待する」という数値目標を掲げた。今年4月には女性活躍推進法が施行され、女性管理職の登用に積極的でなかった企業もようやく重い腰を上げた。これまで女性を管理職候補として育成してこなかった企業における大抜擢人事も多くなった。
そんななか、“少数派”である女性管理職に対して、特に男性の部下が戸惑う場面が多く見られるようになった。「女性は感情で仕事をするから付き合いづらい」「女性は社内政治に弱いから、自分の昇格や出世に影響がありそう」「どうせ数値目標のために下駄を履かされて昇進しただけ」など、マイナスのイメージも氾濫している。
では、なぜ女性上司は「付き合いづらい」と思われがちなのか。もし男性が女性上司の下についた場合、部下としてどう接すればよいのだろうか。
女性上司に対して男性部下が抱く「戸惑いの本音」を紹介すると共に、女性上司の本音を知り、信頼関係を築くためのコミュニケーション法について、数多くの管理職研修で講師を務めてきたサイコム・ブレインズ株式会社専務取締役の太田由紀氏に話を聞いた。
管理職に求められる能力は
男女で異なるのか?
太田氏は、男女問わず管理職と管理職候補に対する研修を数多く行ってきた上で、「管理職に求められる能力は、男女変わらない」と断言する。一方で、管理職になってからのやり甲斐を聞くと、男女異なる意見が出たという。
女性管理職からは「部下を育てたい」「後に続く人たちのために道をつくりたい」という利他性を意識した意見が次々に出た一方で、男性管理職の場合は、「自分の夢を実現したい」という自身のビジョンにこだわる意見のほうが圧倒的に多かったという。
どちらが良いということでなく、そうした男女の特徴の違いがあるため、「強みと弱みはそれぞれ別のものを持っている」と太田氏は語る。つまり、得意とするところと苦手なところがあるため、男女ともに補強すべき点が異なるのだ。
たとえば、女性管理職が補強すべき点は、論理思考、意思決定力の強化、前面に出て強力に部下を引っ張るようなカリスマ型でないリーダーシップスタイルをつくること、大きなビジョン(目標)を描くこと、といった点だ。
反対に男性は、双方向コミュニケーション力、部下の育成に関することの補強が必要となる。育成については、人によって異なる部分も多いが、女性のほうが育成に関心が強い傾向にあるからだ。