時には、女性上司の気持ちを想像することも大事だ。おそらく、部下がやりにくいと思っている以上に、女性上司はやりにくいと思っていることのほうが多いのだ。

舞台は会社ではなく「社会」
女性活躍躍進と企業の課題

 女性管理職が一気に増えると「実力がないくせに昇進した」「どうせ数合わせだ」といった意見も聞かれるようになる。確かに、安倍政権が女性管理職の数値目標を設定したことは、女性管理職が増えるきっかけにはなった。しかし、具体的な数字を示してもなお、女性管理職が急激に増える気配はない。今後は無理矢理にでも意思決定機関に女性を一定数入れなければ、いつまでも世の中は変わらないままだろう。

 女性管理職登用について、太田氏は「下駄を履かせてもやるべき」と語る。もちろん下駄を履かせた以上は、企業も教育・育成に力を入れて、少なくとも管理職になった半年後には、「あの上司は、下駄を履かされて管理職になったと思ったけど、やはり実力だった」と噂されるようになることが理想だ。そのためには、社外の専門家のコーチングを受けたり、社内のメンターやスポンサーをつけたりすることが大事だと太田氏は語る。

 一方、管理職になりたがらない女性も多いが、結果的には「管理職になってよかった」という人が圧倒的に多いという。管理職になった女性は、目的ができ期待されることで日々が楽しくなり、仕事だけでなく、私生活の満足度も高くなるのだとか。人に期待されるとやり甲斐も生まれ、人に感謝されることは人間としての自信が持てるし張りができる。

 長時間労働の是正も考えなければ女性の躍進は難しいだろうが、一方で女性活躍推進を始めてどこの企業でも苦労しているのは、中高年の男性の処遇や行き場だという。女性が活躍することで、中高年の居場所が減っていくことは、男性にとって死活問題となる。そのため多くの企業では、評価制度や人事制度を変え、年齢性別にかかわらず社内で起業ができるなどのチャレンジ制度づくりを始めているという。

 男女ともに活躍できる道をつくることは、多くの企業にとっての経営責任である。そして男女の別にかかわらず、企業は早いうちからキャリア教育をすべきだろう。今まで社員は、きちんと就職して会社のために働けば、ある程度将来が約束されていた。そのため、仕事を含めた生き方を自分で決めようという感覚がなかった人が多い。しかし、仕事という狭い範囲ではなく、職業生活や社会における自分の役割、自分の生きてきた経緯がキャリアになるのだから、今後は「自分はこの会社でどう生きていくのか」よりも、「社会でどう生きるのか」を真剣に考えなければならない時代に移り変わっているのだ。

 上手な付き合い方の正解は1つではない。女性だから、男性だから、という点を認めながらも、意識しすぎず、それぞれの役割に専念すれば、お互い上手くいくのではないだろうか。

(取材・文/フリーライター・安田有希子)