もちろん、1999年に自公連立が成立してから、既に17年も経っている。選挙協力を繰り返すことで、自公の地方組織は事実上一体化しているという。これを分断して、再び民公の関係を再構築するのが極めて困難なのは言うまでもない。だが、自公の間に付け入る隙が全くないわけではない。

 安倍政権は国政選挙で4連勝した(第136回)。衆参両院で与党は過半数を大きく超えている。安倍政権の基盤は、過去の政権にないほど安定しているように見える。しかし、「安倍一強」になればなるほど、政権内における公明党の存在意義が失われていくことも現実である。

 前回指摘したことだが、参院選によって改憲勢力が3分の2を占めても、改憲勢力の主張はバラバラであり、連立与党内でも9条改正に公明党が慎重な姿勢を崩していない。この状況に対して、安倍首相は公明党を牽制するために、民進党の中に手を突っ込んで、分裂を狙ってくるだろう(第139回)。

 蓮舫新代表は、憲法改正の議論を始めることを否定していない。ならば思い切って、安倍首相が9条改正を巡って公明党を牽制する動きに、乗ってみてはどうだろうか。「憲法9条改正の議論に加わる」と宣言するのである。こうなると、自民党の連立パートナーとしての公明党の存在意義が一層ぐらつくことになる。

 公明党は、支持母体の創価学会の会員から、安保法制などの対応で「自民党の補完勢力に成り下がり、平和の党の看板を失った」と、強い不満を持たれている。長年の自公政権に対して会員が抱えるストレスは極限に達しているのではないだろうか。民進党が憲法9条改正で前のめりになり、自民党との関係がよくなっていけば、自民党は公明党に冷淡になっていく。公明党は耐えられなくなるだろう。遂に連立離脱という事態もあり得る。

 民進党は、公明党が連立離脱を決定したら、安倍政権と9条改正の細部で揉めて、「やっぱり安倍政権とは一緒にやれない」とブチ切れて、席を蹴って協議を打ち切ってしまえばいい。そして、一呼吸おいて、公明党との関係を再構築していくのだ。

 徹底した大衆迎合で政策に現実性がなく、サイレントマジョリティに不信感を持たれている共産党と違い、公明党は自公政権の経験を蓄積して政策は現実的である。安保法制は、公明党の現実的な対応によって成立したのである(第111回)。しかし、政策志向は「保守」の安倍政権より、むしろ民進党の蓮舫新代表などの「中道路線」に近い。民進党が政権獲得のために「中規模ネットワーク政党」を必要とするならば、共産党よりも公明党との連携の可能性を考えるほうが、中長期的に見れば正しい方向性であると考える。

 繰り返すが、民公連携へのハードルが極めて高いのは言うまでもない。「寄り合い所帯」と批判される民進党にとって、憲法改正の「政局」で主導権を握るというのも、極めて難しいことだ。だが、それでも水面下から公明党へのアプローチを始めるべきだ。それは、中央の政治家同士というより、元々強い関係があった地方組織同士で、創価学会の会員の不満を拾い上げるところから、コンタクトを始めてみたらいいのではないだろうか。

 日本の歴史を振り返れば、「自社さ政権」があった。55年体制下で対立関係にあった自民党と社会党が連立を組むことは、当時では常識はずれであった。それ以上に驚かされるのは、自民党が社会党に接近したのは、社会党が細川護熙政権で与党内にいた時のことだ。このことを考えれば、公明党が連立与党内にいるからといって、民進党が自公分断を狙って接触することは、絶対にムリとは言えない。蓮舫新代表率いる民進党には、これくらいの大胆な発想を持ち、政権奪取を狙ってもらいたい。