リオデジャネイロ・オリンピック閉会式のリオから東京への引継ぎセレモニーで、安倍晋三首相が任天堂のゲームキャラクター・スーパーマリオになって登場した。この型破りな演出には国内外で賛否両論が出たが、少なくとも「日本の顔は安倍首相」であり、「東京五輪を仕切るのは安倍首相」という強烈なアピールが含まれていたのは言うまでもない。首相は、2018年9月に満了となる自民党総裁の任期延長を完全に視野に入れているのだ(本連載第138回・p4)。
国民は、安倍首相が憲法改正を進めることを
理解した上で改憲勢力に3分の2の議席を与えた
7月10日に投開票された参院選で、改憲を目指す勢力が衆参両院で3分の2の議席を占めた。これは、戦後70年の日本政治において、自民党一党支配下で「万年野党」が最低限の目標としていたものが、初めて崩れたことを意味する。その意味で、「野党共闘は一定の成果を上げた」とどんなに強弁しようとも、野党が戦後最悪の大惨敗を喫したことは明らかだ(第136回)。
また、野党は「安倍首相は、憲法改正を参院選の争点にしていなかった」とも強弁している。だから、改憲を進めることには民主的な正統性がないというのだ。確かに、首相は選挙中に「改正する条文が定まっていない」などと述べて、街頭演説で憲法改正に触れず、争点化を明らかに避けていた。
しかし野党は、安倍首相が2013年7月の参院選と2014年12月の衆院戦後で、いずれも安全保障政策などを「争点隠し」しながら、選挙後に「白紙委任」を得たかのように推進したことを厳しく批判していた(第64回、第96回)。選挙戦ではしつこく「安倍首相は選挙後、憲法改正を推進する」と訴えていたのだ。
だから、国民が「選挙後に憲法改正が政治課題として浮上する」ということを知らずに投票したなどということはありえない。むしろ国民は、そのことをよく理解した上で、安倍政権を国政選挙で4連勝させた。国民が、憲法改正の国民投票発議が可能となる衆参両院3分の2の議席を与えたのだ。野党は、この厳然たる事実を受け入れるべきである。