民進党の党首が15日に決まる。蓮舫議員の二重国籍問題が騒がれ、討論会も憲法改正への対応や、共産党との選挙協力が取りざたされる程度で、民進党はどんな社会を目指するのか、党首選へのメディアの関心は薄かった。
世間の期待はその程度だろう。冷ややかな眼差しを受け、民進党に求心力が働き始めたようだ。経済政策に社会民主主義の色合いが強まったのが今回の特徴だ。安倍一強体制への対抗軸を鮮明にするためか、分配に軸を置く政策へと傾斜している。
安倍政権の「分配」に対し
その「中身」を問う民進党
遊説の中で「目指す社会」をめぐる発言を拾うと、明確に語っていたのは前原誠治議員だった。行く先々で「All for all オール・フォー・オール」という表現を使った。
「皆が応分に負担し、皆が受益者になる社会」という意味である。後で詳しく説明するが、財政学でユニバーサリズムといわれる再分配方式に沿った考えで、社会民主主義の思想が底流にある。外交・安保ではタカ派とされる前原議員が経済政策で社民色を鮮明にしたのは意外だった。
「民進党を根っこから変えるために立候補した」という玉木雄一郎議員は「人が支え合うことによって力が発揮できる、希望にあふれた日本を作りたい」と言う。オール・フォー・オールに通ずる発想だ。年間5兆円の「子ども国債」を掲げ、教育・子育てにカネがかからない社会にする、という。
蓮舫議員も「世代を超えた再配分政策」を主張する。子育て・教育の費用を財政で賄えば、安心して子どもを産むことでき、少子化対策になるという。
3人に共通するのは「自己責任型社会」ではなく「支え合う暮らし」。目指す方向は、財政を通じた所得の再配分である。
8月の参議院選挙で民進党は「成長と分配の両立」を掲げた。曖昧というか、安易な表現だった。所得を拡大するには成長が必要だが、成長だけだと格差が広がる。公正な分配で均衡が取れた社会を実現したい、という意味だろう。