もっとも、ここに至るまでには障壁もあった。第一に、多くの日系人にとって、牛丼はなじみが薄い食べ物だった。集団移住が終わった70年代は、日本ではまだ「牛丼チェーン黎明期」。先駆者の吉野家でさえ77年にはまだ100店舗余りしかなく、ゼンショーは設立すらされていなかった。

 第二に価格。牛丼並盛で日本とほぼ同額の11~13レアル(約350円)で、現地のホットドッグのおよそ3倍にも上る。

 しかし、肉好き、主食は米、日本に好意的──といった日系人やブラジル人にウケる要素はあり、徐々にブレークした。

 ブラジルでは強盗など凶悪犯罪が多発しており、「治安は年々悪化している」(現地日系人)が、一部店舗は日本と同様、24時間営業にして商機を逃さない構えだ。警備を強化するなどし、これまでに大きな被害はないという。

GYUDONは世界へ

 世界進出の背景には、日本国内での出店余地の限界や人口の頭打ちがある。業界1位のすき家、2位の吉野家、3位の松屋を合わせると国内牛丼店は約4000店舗。人通りの多い駅前など、好条件の立地の多くは既に牛丼店だらけだ。

 そんな中、すき家は今年度過去最多の126店舗を、吉野家は103店舗を中国、インドネシアなどに出す。共に前期比約2倍で、日本の“国民食”牛丼の出店競争は海外に軸足を移しつつある。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)