韓国2位のビールメーカーOBビール(オリエンタル・ブリューワリー)をアサヒビールが買収するとの観測が強まっている。

 OBビールは現在、世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI)の子会社。ABIは昨年の7月、ベルギーに本社を置くインベブが米国最大のアンハイザー・ブッシュを5兆円で買収して誕生したばかりで、両社の販売量は単純合算で年間4230万キロリットル、世界市場の24%を占める巨大企業だ。

 旧インベブは2000年以降、毎年のように大型買収を仕掛け、急膨張を続けてきた。たとえば中国では現在青島ビール(中国2位、世界8位)を含む大手4社がABI傘下にある。そのため、以前から工場再編やブランド整理に動くのは必至と見られてきた。

 かたやアサヒの海外展開は遅れている。オーストラリアやフィリピンの最大手ビールメーカー買収に踏み切ったキリンホールディングスとは対照的だ。

 そこで、ABIとアサヒの思惑が合致する。じつは今年1月、アサヒはABIから青島ビールの株式約20%を取得したばかり。矢継ぎ早の青島ビール、OBビール買収で巻き返しを図る。

 世界を見渡せば、ABI、SABミラー、カールスバーグ・ハイネケン連合の大手3グループがビール市場全体の6割を牛耳る。各社とも大型買収により懐は苦しいが、国際展開でしのぎを削るライバルに売る気はさらさらないだろう。

 となれば、手元資金こそ豊富だが、国際展開が遅れていて当面は脅威とならない日本勢は絶好の売却先だ。世界11位のキリン、12位のアサヒ。20位のサントリーが虎視眈々とビールメジャーのバーゲンセールを待ち受ける構図である。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  小出康成)