予想していた事態がやはり起こった。日本政府観光局(JNTO)が24日、10月の中国人訪日観光客数(推計値)を発表した。それによれば、前年同月比1.8%減の10万6000人となり、9ヵ月ぶりに前年実績を下回ったという。沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を契機とした日中関係の悪化で、増え続けてきた中国人観光客に急ブレーキがかかった、という報道も多くのメディアに出ている。
観光立国を目指す日本政府は、中国を最重要市場と位置づけ、これまで個人向け観光査証(ビザ)の取得要件を緩和したり、中国の観光イベントに出展したりして、中国人観光客誘致を強化してきた。こうした努力の甲斐もあって、中国人訪日観光客も、今年2月以降、毎月過去最高を更新してきた。特に、9月は前年同月比約4割増の13万7000人に達していた。通年の目標は150万人と期待されていた。これでは目標実現がかなり厳しくなりそうだ。
実は、中国のビジネス現場ではもっと深刻な声が上がっている。北京で、とある航空会社の幹部と会った時、北京の一部の旅行社では10月に入ってから日本旅行に関する問い合わせが一日当たり1件しかない、と顔を曇らせていた。「申し込みではなく、ただの問い合わせだけですよ」。私に誤解を与えないよう、その幹部はさらにそう強調してくれたのだ。
それを聞いた私もあいた口が塞がらなかった。それでは、この冬は日本のインバウンド事業はたいへんだ、と心の中で悲鳴を上げた。
冬は、日本の観光業にとって正月の一時期を除けばほとんどがオフシーズンだ。しかし幸い、中国には春節(旧正月)を送る習慣がある。豊かになった中国人のあいだで最近は海外や温暖地で春節を送ることに人気が出ている。雪が降らない中国の南方では、逆に雪の北海道に関心が高い。
10月に入ってから日本旅行に関する問い合わせや申し込みがここまで低いことを考えると、11~12月には相当厳しい結果が出てくると覚悟しなければならない。しかし、嘆いても仕方ない。来年の春節は2月3日だ。まだ数ヵ月ある。いまから働きかければ、あるいは仕組んでおけば、春節まで失地挽回の可能性はまだ十分残っている。