さらに、入社1年目の新人に対しては、「1から10まで教えない」、「感情的にならない」、「能力を信じて期待する」。また、2年目から5年目の社員に対しては、「自分の考えやポリシー、意見を持つようにさせる」、「指導時に手を抜かない」という成功セオリーが明らかになりました。

 初心者から熟達者へと成長していくプロセスでは、「初心者→見習い→中堅→熟達者→一人前」という5つのステップがありますが(Dreyfus 1983、Benner 2001を松尾睦が修正)、私たちの調査では、このうち「一人前」に至る3つのステップ(それが1年目から5年目に相当)を意識しています。

 ここで目指すべきゴールは、「自分のアタマで考えて、適切な行動ができるようになる」ということでしょう。それを実現させたOJTリーダーは、基本的には「本人の考えも否定せずに一度は受け入れる」という行動をとり、頭ごなしに接することはしません。

 OJTリーダーの目から見れば、1年目だろうが5年目だろうが、自分と同じようなレベルでの判断や行動はできていない。若手は、すなわち「未熟」な存在です。

 ともすれば、頭ごなしに指導したくなる。その気持ちは、私にも経験を伴って理解できますが、そこで我慢できるかどうかが、若手が育つか育たないかの分かれ道になる、とも言えるでしょう。多くのOJTリーダーの行動が、それを証明しています。

全身全霊・懇切丁寧な
「教え魔」の功罪

 若手社員が「自分のアタマで考えて、適切な行動ができるようになる」ために、まず新入社員には感情的にならずに、かつ「全部は教えないこと」がとるべき態度である、ということがOJTリーダーへの調査から分かりました。能力を信じて期待する、という基本スタンスをとる必要もあります。