1から10まで教えないで、3までにするか、4までか、あるいは8まではいいのか、という按配については、リーダーの判断に委ねられます。ここでは、1から10までに「付き合う」のか、1から9までお膳立てしてあげてフィニッシュワークだけを経験させて成功体験を味わわせるのか、指導法には多くのバリエーションがありそうです。状況や、業種・職種特性に応じて、選択する必要があるでしょう。
当然ながら、新入社員の行動は成功も失敗もありえます。本人に委ね、任せるウェイトが高いほど、失敗が多くなるはずです。だからこそ、按配については、しっかり考える必要があります。
OJTリーダーの調査からは、少なくとも「1から10まで手取り足取り教える」、いわゆる「教え魔」の下では、若手はその努力に比しては育たない、ということが言えそうです。
2年目から5年目までに
「仕事の信念」が形成される
2年目以降になると、少し違った行動が求められます。「自分の考えやポリシー、意見を持つようにさせる」、「指導時に手を抜かない」ことが必要になります。
初心者の1年目を経て、若手社員は自分のアタマで判断する業務トレーニングを通して、業務に関わる状況が少しづつ見えてきます。それをふまえて次にOJTリーダーが実行するべきは、より自発的な行動を通して、仕事に対する正しい信念を醸成させること、になります。
信念とは、「何のために仕事をするのか」という仕事観を表わし、人間の行動を方向付ける、より根源的な概念、を指します。
経験学習を研究する松尾睦教授は、次のように指摘します。「経験からの学習を考える際には、どうしても経験自体の特性に目が行きがちですが、むしろ“どのような態度・姿勢で仕事に向き合うか”が大切になります。なぜなら、そうした態度・姿勢・信念が、経験から学ぶ力、経験から吸収する力となるからです」(ザ・ファースト・ステップ「一人前の仕事力」、第1巻「経験の意味」より)