「成人の能力開発の70%は仕事上の経験による」。これは、人材育成の定説として広く知られる真実です。OJTによって人は育つ、と言い換えてもいいでしょう。本連載でも何度も述べてきたように、OJTがうまく機能しない、と言われて久しいですが、OJTを再びうまく機能させない限り、若手育成をめぐるモヤモヤ感は払しょくされることはないでしょう。長らくおつきあいいただいたこの連載も、今回が最終回。最後の締めくくりをしたいと思います。

若手の成長には
「計画された失敗」が必要である

 仕事の先輩として、私たちが新入社員や若手社員に対してできるのは、彼らが持つポテンシャルを引き出して、業務経験を重ねることによって、少しずつレベルの高い仕事ができるように協力することです。前回、述べたように、若手の育成は、「中身ゼロの若手に中身を注入すること」ではありません。

 これにはちょっとばかり忍耐も必要になるかもしれません。失敗も織り込んでおく必要がありますし、いざとなったらあなた自身がフォローする場面もあるでしょう。セーフティネットも張っておくべきでしょう。会社にとって、組織にとって、致命的な失敗をするわけにはいきません。それは「計画された失敗」であることが望ましいのでしょう。

 それは、決して難しいことではないと思います。あなたが一人前になる過程で、どのような経験がプラスになり、誰がサポートしてくれたか、思い出してみてください。

 もちろん、私たちが若かったころは、バブル景気があったり、会社の組織にも人的な余裕がありました。だから、当時とまったく同じことは、なかなかできないに違いありません。

 でも、それに近いことはできるはずです。若手が失敗を恐れずチャレンジして、成功も失敗も糧にして成長するのを支えること。