菅直人首相は12月6日、臨時国会の閉幕を受けて記者会見を行った。

 その会談内容は、「政権維持の方策」が基調になっていた。国民向けと言うより、永田町、他党向けの記者会見の印象が強かった。

 菅首相が常に念頭に置かなければならないのは、政局が混迷を深めているのも、国会が不毛な成果に終わるのも、すべて首相自身の責任に帰するということ。鳩山由紀夫前首相や、小沢一郎氏に一義的な責任があるのではないのだ。

 首相は自身の不用意な消費税発言によって参院選の大敗を招き、実質的な不信任を受けたのに“法律”をタテにして続投した。

 首相という立場は法的責任を負うだけでは足りない。政治的責任、道義的責任を負うことによって、首相として政治家として信頼を受けるのだ。そうでなければ統治能力の著しい減衰を招く。

 要するに菅内閣の支持率が下降の一途を辿るのは、大敗しても退陣しなかったことから始まっている。今更どうしようもないほど根が深いのだ。

記者会見から透けて見えた
社民、公明、自民との連携・連立戦略

 さて、記者会見から透けて見えてきた菅首相の政権維持戦略はおおむね次のようなものであろう。

(1)当面は、予算を編成、成立させるために社民党と連携する。

 社民党は、これによって懸案の労働者派遣法改正案を成立させ、予算案にも一定の主張を盛り込む。

 民主党は、そのため、普天間基地移設問題を先送り、武器輸出三原則の見直しも見送り、社民党に配慮する。

(2)統一地方選後は、公明党との連携、連立を目指し、衆参両院での安定多数を確保する。

 そのために菅首相は、機をみて党・閣僚人事を公明党の意向を重視して断行する。

(3)自民党との大連立は、首相の最も望むところだろう。

 記者会見では大連立について首相は「何が何でも反対ではないが、国民に『やむを得ない』と言ってもらえる前提条件がなければ難しい」と言っている。

 この発言は、首相の側から呼びかけることは党内の強い反対論もあって難しいが、自民党側から強く申し入れがあれば直ちに応じるという印象だ。

 もし首相が本気でそんなことを考えているとしたら実に甘いと言わざるを得ない。