米韓FTA(自由貿易協定)交渉が12月3日に合意に達したことを韓国の産業界は歓迎している。FTA発効から10年間の経済効果は80兆ウォンに達するとの試算もあり、期待感は強い。ただ、再交渉の結果、譲歩を迫られた自動車業界などからは当惑の声も聞かれる。

 「米韓合意で、米国、EU(欧州連合)、ASEAN(東南アジア諸国連合)という世界の3大ブロック圏と同時にFTAを結ぶ唯一の国家になった」。李明博大統領は交渉合意を受けてこう自信満々に述べた。 

 米韓FTA交渉は2007年にいったん合意したが、米議会などから批判の声が上がり、今年になって再交渉に入っていた。韓国メディアの表現を借りると、「韓国は、牛肉問題で抵抗したが、自動車では譲歩した」ことで何とか合意にこぎつけた。

 米韓FTAは、農産物を含む全商品の90%について発効3年以内に関税を撤廃する内容で、経済効果も大きい。特に、韓国から見れば、自動車、電機・電子製品、繊維製品などに対する関税がなくなることで価格競争力が高まり、対米輸出増を期待している。

 特に現代自動車グループは、米国現地生産を急拡大する一方で年間50万台の乗用車を米国に輸出しており、関税撤廃は大きな追い風だ。

 だが、再交渉の結果、「即時撤廃」のはずだった排気量3000cc以下の韓国車に対する米国での関税が4年間維持されることが決まったことは大きな痛手となった。

 また、電気自動車に対する関税も、当初合意の「9年後双方が撤廃」を「4年後双方が撤廃」と5年間前倒しになった。電気自動車の開発では米国メーカーが韓国勢より先行しており懸念が出ている。

 さらに韓国は、米国産乗用車に対する関税をFTA発効とともに8%から4%に引き下げることになった。このため、一部では、日本やドイツメーカーの米国生産車の韓国への輸出が急増するとの見方も出ている。

(ジャーナリスト 野口透)