提言では触れていないが、介護保険スタート時に厚労省が自治体向けに出した通達には、保険外サービスとしてこのほかに、家族の布団干しや 来客の応接(お茶、食事の手配等)、自家用車の洗濯、清掃を挙げている。

 同じ通達の中で、厚労省は「日常生活の援助に該当しない行為」として、草むしり、花木の水やり、犬の散歩等ペットの世話 、家具・電気器具等の移動、修繕、模様替え、大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ、室内外家屋の修理、ペンキ塗り、植木の剪定等の園芸、正月・節句等のために特別な手間をかけて行う調理―――を列挙している。

 いずれも、普通の暮らしには欠かせない「家事」であろう。これらを保険内サービスの提供時間中に行うと「禁止している混合介護」となってしまう。

 提言は、利用者やその家族の日常生活の寄り添った支援をするには、混合介護が極めて効率的だと訴える。

 しかも、事業者にとってもメリットが大きいという。「既存事業者の業務拡大の可能性が広がるほか、意欲ある事業者の新規参入の可能性を広げ、介護サービスの供給量が増大することだけでなく、その質が向上することにも資すると考えられる」。介護サービスの質まで高まると断言する。

 市場経済では、事業者は利用者の意を推し量り、その潜在的な要望を具体的なサービスとして生み出し、実現させるために競い合う。確かに、競ううちにサービスの質が良くなっていく。コンビニエンスストアや宅配便、携帯電話などの規制改革の歴史が証明している。いずれも、商店街や運送業界、国営事業者など既存組織や霞が関からの抵抗が強かったが、消費者利益が勝り、新市場を形成できた。

 提言は、さらに「事業者の収入増をもたらし、介護職員の処遇改善につながる」とも記す。

 介護業界の大きな課題と言われる低賃金構造の改革にもつながると強調する。介護スタッフの賃金は、3年に一度見直される介護報酬に左右され、それも消費税の先送りで財源は苦しい状況が続く。処遇改善の特別報酬が設定されてはいるが、とても大幅な引き上げは見込めそうもない。事業者にとって保険内事業に依存しているだけでは、この苦境を脱するのは難しい。

 そこへ、混合介護でサービスの裾野が広がれば、新たな需要が期待でき、総収入が増えるチャンスが高まる。賃金増への道筋が開かれる。