前回に続いて、優れたOJTリーダーの調査に基づく、「育て上手な上司・先輩の指導行動」について解説します。今回は、優れたOJTリーダーのPLAN-DOについて。「目標設定」と「障害への対処」という2つの段階での留意点=セオリーです。

明確な目標設定が
善きOJTのスタートライン

「若手が思うように育たない」、「ちょっと叱ると激しく落ち込んでしまう」…。業種・職種を問わず、そこここで聞かれる上司・先輩の悩みです。

 バブル崩壊前に社会人になった方なら、「いいからやれ!」と仕事を与えられ、試行錯誤を繰り返しながらなんとかモノにしていった経験があるはずです。上司や先輩は要所要所でアドバイスをしてくれましたが、ひとつの仕事について、最初から意味や意義を事細かに説明することは希でした(業種・職種、あるいは状況によって例外はあったと思いますが)。

 しかし、それから20余年たち、今、同じように「いいからやれ!」と仕事を与えることは、若手には通じにくくなっています。

 どちらが正しいか、と問うのは意味がないでしょう。私たちは、昔とは違う現実に対応しなければなりません。

 優れたOJTリーダーの指導行動に関する調査結果が、そのことをよく示しています。

 前々回に書きましたが、調査の概要は次のようなものです。

 ビジネスマンの熟達化を研究する神戸大学大学院経営学研究科の松尾睦教授(当時は小樽商科大学教授)との共同調査ですが、まず、指導上手なOJTトレーナーに対してインタビューを重ね、また自由記述調査をしました。そのプレ調査の結果から176項目の指導行動を抽出し、何が若手人材の成長に影響を持つのか、調査紙による本調査を実施。22社の協力で、1410名の回答を得、それを精緻に分析しました。