社員が自ら望んで行う残業は
「あり」か「なし」か?

 さて、仕事の構造や会議の構造をいくら変えても減らない残業がある。それは社員が自ら望んで行う残業だ。

「生活が苦しいから残業代が必要だ」という社員は、会社全体で「帰れ!」と言えば意外と減っていくものだ。しかし、本人が「仕事が好きで働きたい」という場合はどうだろう?日本電産の永守社長自身がそうだったように。

 人間があるスキルに習熟するには1万時間が必要だという説があり、これはかなりの部分で正しいらしい。それがスポーツであれ、趣味であれ、仕事であれ、1万時間こなしたあたりで深いところまで理解が進む。つまり、その道のプロになれるのだ。

 そこで若手社員が「早くこの仕事のプロになりたい」と考えたとしよう。経理でも営業でも企画でもいい。年間1950時間労働で残業ゼロの会社で働くと、1万時間に到達するのは6年目だ。ところが永守社長のように働けば、2年で1万時間に達することができる。

 私自身、コンサルティングファームに入社した最初の5年は、勤務時間が毎年5000時間を超えていた。午前2時にタクシーで帰宅して、翌朝は9時半に出社する毎日。当然土日はない。仕事はきついが、チャレンジングであり、タフな毎日をある意味で楽しんでいた。

 そして、そういう働き方をする人材でなければ生き残れない職場でもあった。コンサルティングファームが残業ゼロを目指すことはまあ考えにくいが、普通の会社の職場にも、「少しでも多く働いて、スキルを身に付け、実績を上げて、職場でのし上がりたい」と考えている若手は存在する。ないしは「この会社の仕事は3年で覚えて、次のよりよいキャリアを求めて転職したい」と、内心考えている部下もいる。

 彼らに「残業ゼロ」を納得させるのはかなり難しい。逆にそういった人材が隠れて長時間労働をし、結果的にいい仕事をする場合は、他の社員との評価において不公平が起きる。

「仕事をし過ぎる社員は、うちの会社には必要ない」

 どこまで経営者がそう自信を持って言い切れるか、最後はそこが問われるのである。