ベトナム戦争で捕虜となった経験のあるジョン・マケイン上院議員を、長年尊敬してきたジョン。自らも軍経験があるだけに、軍人の息子を戦場で亡くしたイスラム系アメリカ人のカーン氏が民主党党大会で行なった演説に対する、トランプの発言をどう思ったのか聞いてみた。

「確かに、軍人の息子を亡くした親の宗教をあげつらったのは、得策ではなかった。ただ公の場で、民主党に利用されつつトランプ批判をぶち上げれば、トランプから反撃が飛んでくるのは、あの夫婦だってある程度予想してたはずだ」

 75年の歳月をかけて、共和党内部に人脈の網をはりめぐらせてきたジョンにとって、共和党エリートたちの存在は、時として「トランプ大統領」実現の大きな障害にもなり得るという。

 たとえば、ミシガン州知事のリック・スナイダー。ベンチャーキャピタリストの経歴を持ち、労働組合と民主党が強かったミシガンで、共和党員として2011年に知事に就任した。だが、2014年にフリント地域の水道水に人体に危険な鉛が混入していた事件が発覚し、スナイダーの州知事としての責任が厳しく問われ、彼の罷免を求める州民も多い。

「リックは個人的にも知ってるけど、彼がトランプ支持を表明せずに沈黙していて助かっている。彼がトランプ支持を表明したら『トランプはフリントの水危機を起こした張本人だ』とリベラルが騒ぎかねない。それはまずい」

自分はもうすぐいなくなるけど
孫の世代に負債を残したくない

歴代大統領の記念品があちこちに。オバマ大統領のトイレットペーパーも
道を走るクルマから見えるように、トランプのサインを立てるジョン
共和党のシンボルマスコットのゾウ。友人からのギフトがほとんど

 大統領選の投票日まで、あとわずか。まだどちらの候補に票を投じるか決めていない層を、土壇場で説得する必要があるというジョン。ターゲットは若者たち。特に、大学生を中心とするバーニー・サンダースの支持者たちだ。

 ジョージア州に住む大学生の孫娘に頻繁に電話を入れる。彼女はバーニーのファンだ。

「ハニー、おじいちゃんはあと10年経てばこの世にいない。そのときに膨れ上がった国の累積債務を背負わされるのは、お前とお前の子どもの世代だよ。トランプに票を入れれば、国の負債は減り、お前たちの負担も減る。ヒラリーに票を入れたら、将来生まれるお前の子も大きな負債を抱えることになるんだよ。いいの?」

 この「おじいちゃんはもうすぐいなくなるけど、お前の世代に負債を残したくない」という論法は、感情にダイレクトに訴えるぶん、意外にリベラル派の若者にも効果があるとジョンは言う。

 トランプが女性やメキシコ移民、イスラム教徒に発してきた数々の暴言により、若者の間でトランプの評判が悪いことはジョンも承知だ。